マトリョーシカ的日常

ワクワクばらまく明日のブログ。

読書

どこから読んでも草不可避/もしも矢沢永吉が『桃太郎』を朗読したら

先日、星井七億 (id:nanaoku) さんの桃太郎の本を購入した。これは、日本昔話の桃太郎をさまざまな切り口で展開させる話だ。タイトルの「矢沢永吉〜」はその代表作である。「この時点でもうスターの素質があったのよ」「金銀財宝とか、BRAVIAとか、プレミア…

金曜のたい焼きに結合するあんこ/「純粋理性批判(上)」解説 その2

木曜日はたい焼きの日と決めていて、おばちゃんが経営するその店でもちもちのたい焼きを買っている。しかし、今週は木曜は店の諸事情で休みになっており、僕はその恒例行事を一日延期した。つまり昨日のことだ。一日遅れで購入したそれは、ちゃんとおいしか…

あたりまえ体操の入り口 / 純粋理性批判(上)の解説

ひとむかし前に、あたりまえ体操というのが流行った。2人組の男性があたりまえの動きについて論じている。「右足出して左足出すと、歩ける」「手首をまえに何回か曲げると、人来る」彼らはそうやって笑いをつくっていた。しかし、あたりまえとは何なのだろう…

それほど役に立たない円周率のはなし 後編/「πの話」

円周率をどのように求めるかを研究するにつれて、円周率そのものが何であるかも分かってきた。ギリシアの三大難問のひとつに円積問題がある。これは「与えられた円と同じ面積をもつ正方形を定規とコンパスだけで描けるか」というものだ。

日常生活ではまったく役に立たない円周率の歴史/『πの話』

円周率にはまっている。別に小数点百位まで覚えるとかそういうものではなく、ただ単に円周率の歴史が気になって本を読んでいただけだ。『πの話』の中身は、人類の円周率の発見と分析の歴史である。およそ3の時代からはじまり、幾何的、物理的な計算、そして…

答えより問いに価値あるデザインは/雑誌「WIRED Vol.15」

最適なソリューションなんてどこにもないのかもしれない。僕らが求めているのは答えよりも問いそのものであって、空が青い理由を知ることよりも、青い空を眺める余裕を持つことのほうが重要だったりする。そんな休日だった。

そこらへんの記録抹殺刑(ダムナーティオ・メモリアエ)/ローマ人の物語23

七十九年、ヴェスパシアヌスの死後、息子のティトゥスが帝位につく。よきことをしようと努めたが、ヴェスヴィオ火山の噴火やローマ大火、疫病の処理に追われていたら倒れた。 八十一年、弟のドミティアヌスが兄に代わる。在位十五年の間にインフラ整備や多数…

存在としてのピッコロ、それは「聖なる侵入」

存在について書く、なんて大風呂敷を広げなきゃよかった。その問題は今までに数えきれない哲学者が言い切れない時間を使って考え抜いてきたからだ。彼らがバウムクーヘンの根っこを形づくり、年頃の若者たちが似たりよったりの理想を上書きする。死は生だと…

フィボナッチに潜む神、そして「聖なる侵入」

小学生の頃、算数がぞっとするほど苦手だった。三桁同士の足し算や引き算は苦労した。筆算をプリントのあちこちに書き込んで解いていくのだが、毎回違った答えになってしまい焦る。特に繰り下がりの引き算は時間がかかった。「十の位から借りてくる」とかそ…

三分間ビックヌードルと聖なる侵入

間が空いてしまったが、フィリップ.K.Dick著の『聖なる侵入』についてつらつらと書いていくことにする。 世界はキリストイスラム協会(CIC)と科学遣外使節団(SL)に支配されていた。前者を率いるフルトン・スタトラー・ハームス枢機卿と後者の最高行政官である…

一郎さんの後悔はみんなの明日につながる/「僕が18年勤めた会社を辞めた時、後悔した12のこと」

驚くほどネガティブなビジネス書だった。これには後悔しか書かれていない。すがりたくなるような強いフレーズはどこにもなく、元気がでてくるような明るいエピソードもない。だからこそ読む価値がある。 著者の和田一郎、ICHIROYAと言えばはてなブロガーのみ…

苦味を所有したがる男の名前はエマニュエル/「聖なる侵入 新訳」

地球外の惑星で、ライビスは処女のまま子を妊娠する。その子は神「ヤア」であり、地球から追いやられた神は女性の体を使って故郷へ侵入しようとしていた。しかし、突入時の事故によりライビスは死亡。胎児のみが生き残った。胎児は神の記憶を失い、エマニュ…

丸投げという名の信頼はローマから/「ローマ人の物語22」

ヴィテリウスの死後、皇帝となったのはヴェスパシアヌスである。しかし、本書では彼はあまり表に出てこない。西方のガリアの反乱は筋肉むきむきムキアヌスに、東方のユダヤ戦記は息子のティトゥスに任せていた。本人はエジプトでじっくり待機。ほとぼりが冷…

人間はワクワクし、ときどき火星に仲間を欲しがる/「インターネット的」

糸井重里は『インターネット的』において、インターネットがもたらす変化について説明している。十年も前の話だ。人や物は有機的につながり、共有され、対等な匿名性のある立場に置かれる。インターネットは情報を手早く均質にやりとりする環境そのものであ…

健全な曇りある眼/ローマ人の物語21

ネロが自死した翌年は、皇帝が三人現れては消えていった。一年のうちに国のトップが三たび変わったのだ。不安定と表現するには生温い。ガルバ、オトー、ヴィテリウス。みな悪人というわけではない。ただ、各人の短所がタイミングよく働き時代の流れに押しつ…

煽り耐性の低いリーダー/ローマ人の物語20 悪名高き皇帝たち(四)

この本を読むまでネロのことをよく知らなかった。暴君ネロという単語のみを知っていて、ひどく辛い食べ物はネロが語源になったのかもしれぬ、などとくだらない思索に時間を費やしていた。 クラウディウスが毒殺された後、彼は若干十六歳で巨大帝国ローマの皇…

情報を統御させる唯一の存在が『ヴァリス』なんです。

まとまった文章を書こうとするからペンが進まなくなる。正面きって対峙しようとした俺が愚かだったのだ。良い本は一口大に切られることを許されない。巨大な一枚岩のように泰然とそこへ居座る。俺ができるのは魚眼レンズを持ってしても捉えきれないパノラマ…

威厳のないリーダー/ローマ人の物語19

今年はローマ史を勉強することにした。教科書は塩野七生の『ローマ人の物語』にする。今年のうちに全巻を読破したいが、どうだろうか。途中まで読んでいるので、19巻から始める。 カリグラの暗殺後、クラウディウスは四代目皇帝となった。紀元四十一年のこと…

均質で不均衡な海辺のカフカ

『海辺のカフカ』を読んだ。十五歳の少年が家出をしてやがて帰る話だ。それ以上でも以下でもない。彼は典型的な思春期の少年であり、自分の中にカラスという別の人格を見いだしている。その悪魔がヒップホップで食っていけとささやく、と似たようなニュアン…

思わず線を引いてしまう雑誌なんて、WIREDくらいだ。

週末は書店の雑誌コーナーに足を運び、ブルータスやCasa、万年筆の本を立ち読みした。載っている写真は非常に魅力的で、僕は網膜から養分を摂取するようにじぃっと見つめる。ただの紙なのに美容室に行った後のような爽快な気分になる。しかし買わない。立ち…

今年読んだ本から適当に選んでチョイスしたセレクション5選。

本には何も書かれていない。これは、僕が読書から得た最大の成果である。彼らは何かを話すが、それは読者を直接的に幸福に導くことはなく、あくまで触媒として作用するだけだ。答えは自分の中で既に持っているし、どうやるかも分かっているはずだ。ただ今の…

立派ならラッパー、プログラマー。歯間に挟まるコバンザメ。

記憶はかすんでいく。思い出はすたれていく。衣類に染み付いたタバコの匂いは消えなくとも、そこから彼らを確かめることが少なくなる。最近は、湯船につかるのが億劫になり、だいたいはシャワーで済ましている。温水を出しっぱなしにしながらうなだれている…

【寄稿】「まだ東京で消耗しているの?」から始める、「月3万円ビジネス」の読み方。

寄稿を頂きました。 Pythonで学ぶ金融工学 のokuzawats (id:ayb)さんより寄稿を頂きました。ありがたいです。僕もokuzawatsさんのブログへ記事を投稿しました。そちらも暇があったら読んでみてください。以下本文。 「月3万円ビジネス」を読む。 いつもお…

ここは洗濯男、観測地点C

タイトルは適当です。 どこかで心のよりどころを探している。よりどころというのは拠り所と書くようだけど、僕は糸を縒るほうをイメージしてしまう。脳内に隠された数本の思考をよってよって一本の糸にするような、そんな場所が欲しい。「ブログだよ、ブログ…

コーヒーと「義務」について/UCC香り炒り豆 有機栽培珈琲

コーヒー日記。 昨日、コーヒー豆がamazonから届いた。パッケージを手にしてにやにやしていると、「クリスマスプレゼントを持っている少年のようだね」と言われた。そうかもしれない。緑色の包装に赤いコーヒーの実が描かれているデザインは、考えるとクリス…

最高にカッチョイイ意志があるんだよ。/カント「道徳形而上学原論」

目的のないじかたび photo by @Doug88888 この文章の帰結も考えずにペンを進める事態になった。なにせこの寒気のせいで街角の交差点は全て凍結し、吐く息はその場でパラパラと氷の結晶になってしまうからだ。寒さの中で僕は考えを進めることが出来ない。昔か…

映画インターステラーとショウペンハウエル『知性について』

インターステラーを観た。 映画館に行くのは五六年ぶりで、半券がタッチパネルで買えるようになっていたり、待合室に大きなディスプレイが置かれていて驚いた。少し待ってからシアターに入った。僕の後から何人かの人が入ってきてめいめいの座席に座った。家…

仕事の意味を見つける作業とショウペンハウエル「知性について」

皿洗いと知性 深夜の皿洗いは立禅である。昨日リビングのホットカーペットの上で寝てしまった僕は、爛々と光る蛍光灯のもと午前二時に目が覚めた。体の節々の痛みに耳をかたむけながらそっと起き上がり、ほとほと台所へ向った。夕飯の食器がまだ残っていたの…

時の試練に耐えた本棚晒しとショウペンハウエル『知性について』

時間と空間の観念性 前回告知したように、今日は『知性について』の中から時間と空間の観念性について話そう。観念性とは形のないぬるりとした液体のどんよりであり、決して沈殿することのない博多の塩のような味だ。要するによくわからないものだ。ショウペ…

GUMIドーナツホールとショウペンハウエル『知性について』

どれみふぁドーナツを知る人はもういないか。 『知性について』を何度も読み込んでいるが、彼の言葉はひらひらとしてつかみにくく、ひとつのセンテンスを読み飛ばそうものなら虚無の世界へと引き込まれてしまう。真剣に読もうとすると業務以上の集中力を必要…