一瞬の気づき
行きも帰りもありがとうございますありがとうございますと言ってくれる駅員さんがいる。それも一人ではない。彼らは入れ替わり立ち替わりぼくらにあいさつをしかけてくる。感謝したい気持ちはわかる。ぼくらの運賃は彼らの収入になるから言い換えればぼくらの移動によってかれらは生きながらえているのだ。
しかしつまらないなと感じながら改札を横切る。ピッという電子音がして一拍とってからまた考えはじめた。ただあいさつだけというのはつまらない。駅という場所は多様な人間たちが一同に集うところだ。職場や学校では絶対にかかわらないような人たちとすれ違っているのだ。あの駅員は惜しいとは思わないのか。
あいさつの代わりにハイタッチをしてほしい。いってらっしゃいと右手を差し出して改札をくぐる前にみんなでハイタッチをするのだ。
ありがとうございます
ピッ
ありがとうございます
ピッ
このリズムが
いってらっしゃい
パチン
ピッ
いってらっしゃい
パチン
ピッ
となるのだ。どうだろう。何も変わらないじゃないかどうしてくれる。いやきっと乗客も駅員も満足してくれるに違いない。殺伐とした月曜のプラットホームだって幸せ溢れる緑の街になるはずた。
この技術をさらに発展させてハイタッチ交差点を作ろう。信号が青になるとスクランブル交差点の中央で見知らぬ人たちがハイタッチし合うのだ。いやしなければならないこれは義務だから。
サッカーの試合に勝った後の高揚感によるハイタッチではない。いつもの何気ない人間本来のハイタッチだ。それはきっとみんなをいい感じにあれしてくれる。