目をさますと新宿にいた。人は少なく、途方もなく高いビルがあたりを支配していた。私は新宿駅を目指した。どこに行けばいいのか、しばらく迷った。新宿駅がいくつもあった。地下に潜ることは避けたかったので、JR新宿駅に行くことにした。改札を通り、黄色い電車に乗った。
この旅に目的はない。ただ、なにかの確証が欲しかった。自身の内側にへばりついているそれに、名前をつけたかった。意味を与える作業だ。
御茶ノ水で降りた。東京医科歯科大学を経て、しばらく道を歩いた。しばらく道を歩いた。かかとが痛くなる頃に、赤門が見えた。確かに赤かった。思ったより小さかった。写真を撮った。また歩き、正門をくぐり抜けて安田大講堂に到着した。芝生の向こうで、アカペラサークルが練習していた。それだけだった。辺りには大学特有の匂いが散布されていた。何かになれそうで、なれなそうなあれ。
東大を出て、いくつかの交差点を通り、坂を上って下った。小石川植物園に着いた。400円の入場料を支払い、植物をみた。NHKの0655という番組で、小石川植物園の歌が流れていて、いつか行ってみたいと思っていた。そうして来た。メンデルのぶどうを見た。ニュートンのリンゴの木も見た。いろはもみじの並木を通った。あらゆるものに名前があることに、私は驚いた。子供とその父親が、並木道を競争していた。そこにもツツジはあった。
植物園を出ると11時を回っていた。朝ごはんをろくに食べていないことに気づいて、近くの松屋で食べた。いつもの並盛りではなく、大盛りを頼んだ。多かった。
続く。