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【書評】悪意のない敵がもっとも怖い/宇宙英雄ローダンシリーズ<105>奇妙な侵攻

敵ではない敵

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奇妙な侵攻 (ハヤカワ文庫 SF(584)―宇宙英雄ローダン・シリーズ 105)


 さて、緑階層からなんとか抜け出したローダンたちは黄階層へとたどり着く。放射能で溢れたその世界で彼らが見たものは、崩壊し朽ち果てた都市だった。しかしミュータントのグッキーは多数の思考インパルスをキャッチする。とんでもない世界にはとんでもない生物が住んでいたのだ!

 脱出、そして帰還。世界最長SFオペラの第105巻を紹介。


感情を送り込んじゃうミュータント

 この巻のキーパーソンは、先ほど述べたとんでもない生物である。彼らは自らをみせかけ殺しと名乗る犬くらいの大きさのミュータントである。10キロ圏内ならテレポートが可能で、放射能を食糧としている。思考は持たず、感情のみを発している。彼らはもとは主人に仕えており、感情を持たない主人に代わって感情を提供していた。主人はみせかけ殺しに生活に必要なものを与えていた。共存していたのだ。

 遠い昔に主人がいなくなり、奉仕先に困っていた時にローダン一行が来た。また主人がきたと思った彼らはローダンたちに圧倒的幸福を捧げる。感情を奇妙な力によって相手に送ることができるのだ。

 悪意を持たない敵というのは非常にやっかいだ。おばちゃんのおせっかい、善意の押しつけ、宗教の勧誘。説得しても通じないこともある。僕はそんなときは明らかに関心がない態度をとったり、無視をしたりする。距離を置いてみたりね。みせかけ殺しはテレポートしてくるから無駄だろうけど。

ミュータント部隊紹介

 恒例のミュータント隊員の紹介に移る。今回紹介するのはテレオプティカーのラルフ・マルテンだ。彼は自分の意識を一定時間、他者のからだに移すことが出来る。他人の目で見て、耳で聞くことができる。しかもその間、相手は気付かない。NARUTOの心転身の術と似ている。

 性格はまじめでおとなしい。というより、グッキーやゲッコーと比べれば誰もが大人しくなってしまうのだが。

勇気ある若者

 この巻の見所はみせかけ殺しの一人(?)であるハヨが他のみせかけ殺しを説得して、ローダンたちに取り付くのをやめさせるところである。そのあたりの詳細は小説を読んでほしいので割愛することにする。ここではハヨについてとりあげたい。

 彼は他の者たちがローダン達を主人を決めつけるのに対し疑問を抱いた。

<主人たちもわれわれも、おたがいをほとんど知らない>ハヨはなおもためらった。<かれらについて、われわれは何を知っている? どんな姿さえ知らないじゃないですか。むこうもわれわれがどんなかたちだか知らない。いろんな誤解が生じかねませんよ……>

 多数派(というより、この場合はハヨ以外全員)の考えに疑問を抱き意見するというのは難しいことだ。しかし彼はそれを指摘した。もっともな理屈だが、思考をしないみせかけ殺しにとってハヨの意見は特異なものに見えるのだろうなあ。

 このあとなんだかんだあって、ハヨはローダンに仲間に入れてほしいと頼む。しかしローダンは他のみせかけ殺しの指導者となるように諭す。前半はみせかけ殺しにやられ、あふあふしていたローダンだが、おいしいところは全部持っていくのだ。

クレストII救助班、出動!

 さて、後半の話(ローダンシリーズの文庫は二話構成である)ではローダンたちを救助しようと太陽系あたりに動きが出てくる。環境適応人間や舌打ちをする巨大カエル、天才肌の数学者など個性的な人物が登場し、これまた面白いはなしになっている。

 しかしローダンたちの行動があんなにもあっさりわかるのはご都合主義だよなぁ。

おわりに

 先日紹介した「本を読む本」に小説は一気によむべし!という旨が書かれてあった。まさにその通りだが、僕はそこに「書評も読んだ後に一気に書くべし!」と付け加えたい。特に小説の書評は読後感ものせって勢いで書いていかないと失速して、遂には手が動かなくなってしまう。

 読んだら書く、書いたら読む。のサイクルを短くしていきたい。


 やっとローダンシリーズを読み進めることが出来る。その前に深夜特急を読むか。あぁ、ローマ人の物語も……。

 本日はここまで。