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マトリョーシカ的日常

ワクワクばらまく明日のブログ。

晴れた休日と昭和の喫茶店

コーヒー

 週末の過ごし方は大体決まっている。二日のうちどちらかは喫茶店へモーニングを食べにへ行き、もう一日は家でナポリタンをつくる。ナポリタンの話はすでにしたはずなので、今日は喫茶店のほうを話そう。



 その店は自宅から自転車で三十分ほど走ったところにある。大型ショッピングセンターの脇にポツンとたたずむ小さな喫茶店だ。昭和を感じさせる看板とモーニングのメニュー書きがさらりと置いてある。木製の扉をぎいと開くと、クラシック音楽とコーヒーの香ばしい香りが漏れてくる。「いらっしゃいませー」とおばちゃんが言う。「いらっしゃい」、渋いマスターがつぶやく。入り口の印象とは裏腹に店内は意外と広く、八席ほどのカウンターと十ほどのテーブル席がある。テーブルは焦げたような黒色で、それでいてどれも艶がある。四本の足は鉄製で、先端がぐるっと曲げられている。椅子はグランドピアノについているような赤いベロア生地が印象的だ。

 席に座ると、おばちゃんが「いつものでいい?」と聞いてくる。お願いしますと頼み、文庫本を開き万年筆を取り出す。今は『純粋理性批判』を読んでいる。この喫茶店の効能の一つなのか、難しい本を読んでもするすると頭に入ってくる。不思議だ。

 ほどなくして、料理がやって来た。バターが塗られたトーストと、和風ドレッシングがかかった千切りのキャベツ、そしてベーコン入りの目玉焼き。白い陶器のカップにサイフォンで入れてくれたコーヒーが注がれる。本を閉じ、コーヒーを一口頂く。なんでこんなにおいしいんだろう。親しみがありそれでいて洗練されている味と香りだ。料理もちゃんとおいしい、というより食べやすい。そしてコーヒーとよくあう。店内ではジュピターが流れている。

 最近は毎週のように来るので、常連さんの顔も少しずつ覚えて来た。コーヒーを飲みながらスポーツ紙を広げるおじいちゃん、スーツ姿でコーヒーだけを頼むおやじ。雑誌をじっくりと読むおばさま。マスターと何か話しているおじさん。皆、思い思いの休日を過ごしている。いつか彼らやマスターと話をしてみたい。仕事の悩み等を打ち明けられる関係になれたら素敵だろうな。

 アヴェマリアが流れ、お客さんが増えて来たらそろそろ帰る時間である。「ごちそうさまでした」「ありがとうございます」レジの前でおばちゃんと少しだけ話をする。入り口の扉のガラスから、日の光が差し込んでくる。店を出ると春の風がふうと吹いてくる。今日も暖かくなりそうだ。

珈琲時間 2015年 05月号 [雑誌]

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