この世の真理が一足とびにやってくる。そんな快感を欲することがままある。高校生のころに書いた黒歴史小説ノートには、「あらゆる知識がわかってしまう学生が世界を救う話」が載っている。そんな力があれば、テストは常に満点だし、友人関係も全て掌握することができるのに、なんてばかなことを考えていた。
ニッキィ・ウェルトは探偵ではない。英文学の教授だ。しかし、彼は短い文章や少ない物的証拠から、明確な推論を立てることが出来た。「まさかそこまで分かるとは」と驚嘆するほど、その推論はエレガントで読むだけで興奮する。ひとつ紹介しよう。
九マイルもの道を歩くのは容易じゃない、まして雨の中となるとなおさらだ。
この単純な文章から、彼は犯罪者の存在を見抜いた。指紋をとることや聞き込み調査等は全くしていない。純粋にこのワードから論理を組み立てていったのだ。「九マイルという長い道のりを歩かねば行けない事情があった」「これを話した者は運動が得意ではない」「九マイルという正確な距離が分かっているのは、郊外から街に向うとき」などなど。時には思いきった仮説を立てる。かの者が私と同じ街に住んでいる、と。
うなりを上げる。論理がうなりを上げる。回転数が増していきしだいに鋭い音が耳の奥でなってくる。理系探偵のガリレオやホームズなどの、ゴリゴリ名探偵の類ではない、もうひとつの推理の形。それが推論であって、一足飛びにやってくる真理を連れてくる強力な力だ。
ここからは全くどうでもいい話だ。
柔軟剤のCMに和服を着た外国人が映る。僕はあのCMのコンセプトが分からない。いったい、彼女はだれに訴えかけようとしているのか。以前の洗濯関係のCMは日本人女性が真っ白なシャツをたくさん干していることが多かった。これを使えば白くなる、柔らかくなる。そう言いたげだ。しかし、最近はどうだろう。汗に反応して匂いがでるとか、かわいさをアピールしたものが多い。もはや柔軟剤は洗濯という行為の付属品ではなくて、一種の化粧品なのだ。
Fun Fun Foundry はオシャレ女性を意識した新しい柔軟剤の形を呼び起こす。のか?さもありなん。
- 作者: ハリイ・ケメルマン,永井淳,深町眞理子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1976/07
- メディア: 文庫
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