マトリョーシカ的日常

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【書評/感想】データだけあれば野球は語れる/「マネー・ボール」

データ野球!

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マネー・ボール〔完全版〕 (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

 ビリー・ビーンは高い運動能力を買われメジャーへスカウトされたが成績が上がらず彼は選手から球団運営側へ転向した。貧乏球団アスレチックスがいかにしてお金持ち球団に挑むのか。彼はジェイムズの本から新しい評価方法によって選手を選抜するというヒントを得る。ブラッドピッドによって映画化もされたノンフィクション作品。

 僕は野球に詳しくなく、野球を語るには選手の名前とか生い立ちとか戦術とかをよく知っていないとだめだと思っていた。しかしこの本の主人公のビリー・ビーンは主観をなるべく捨て、データのみで判断しようと努力している。データだけでいいなら僕にも野球論に割り込む余地があるはずだ。すこしだけ野球に興味が持てたかな。


不安定だった事柄に基準を設けて判断する

 さて、ビリーが球団を運営する上で参考にしたジェイムズさんのことを話そう。彼は野球経験者でもなく専門家でもなくただの道楽で試合の統計データを集めていた。そしてそれを自分なりの考察を付け加えて自費出版していた。どうにかして選手の強さを定量的に評価したい。データからあれこれ関数を考えて生み出されたが「得点公式」と呼ばれるものだ。

得点数 = (安打数+四球数)×塁打数÷(打数+四球数)

 簡単な数式だが特筆すべきは何らかの基準を設けて目の前にある出来事に色をつけようと努力したことだ。僕らは漠然とした言葉に常に押しながされている。少子高齢化やデフレや新卒一括採用、学歴社会。なぜこういった事柄が起きるのかまたは存在するのか、いつどのくらいの頻度で出くわすのか。考えるためには材料と道具がいる。上に挙げた得点数は道具だ。この道具を使えば「あいつはよく打つし足も速い」とか漠然とした評価がなくなり、「彼は三点、あいつは五点」などと評価できる。

 野球のスコアをデータ化して選手を評価する。ビリーはジェイムズの姿勢に感心しアスレチックスにも適用することを試みた。

ドラフトやトレードはマネーゲームさながら

 この本の面白いところは野球を題材に挙げていながら、一試合に中で起こる選手たちの心情の変化とか駆け引きなどがほとんど出てこないところだ。ビリーにとってどんな感動的な試合もただの一試合でしかなく、選手は資産であり負債でありただのお金だ。

 またドラフトの場面も印象的だ。独自の評価基準で選んだ他球団が見向きもしない選手を根こそぎかっさらうのだ。他球団に自分たちの意図が伝わらないように工夫して、無名の選手を買っていくのはお買い得株を買う投資家のようだ。選ばれた選手も嬉しいし球団側もうれしい。ウィンウィンだね。

データによって野球を語る作品

 この手のデータ型野球を取り上げている作品は僕が知る限り二つある。ひとつは「偏差値70の野球部」もうひとつは「ワンナウツ」だ。前者はずっと前に記事を書いたことがある。
甲子園を目指すも、勘違いから超エリート高校生になってしまった話 - マトリョーシカ的日常

 間違えて進学校に入ってしまった高校生が秀才たちと甲子園を目指すおはなし。「ありえないだろ」という理論が出てきたりするがこれはこれでおもしろい。

 ワンナウツはライアーゲームの作者が描いた野球漫画だ。ワンアウトとったら500万、一点とられたら-5000万というワンナウツ契約を契約した頭脳派投手が主人公。このおかしな契約によってただの勝ち負けでは終わらない新しい野球を作中で見ることができる。

おわりに

 いつか日本のプロ野球をデータで論じてみたい。いっぱい批判が来そうだけど。

 ライアーゲームとか嘘喰いとかカイジとか頭使う漫画が好きです。一方で荒川アンダーブリッジやピューと吹く!ジャガ〜、磯部磯兵衛なども好きです。