マトリョーシカ的日常

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【書評】十日分の酸素をもって宇宙空間を漂流/「宇宙英雄ローダンシリーズ<110> 虚空の死」

ついに決着!

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虚空の死 (ハヤカワ文庫 SF (610)―宇宙英雄ローダン・シリーズ 110)


 驚きの繁殖力と感情のない鉄の心を持つメタン人。絶滅したはずの種族がテラナーたちの前にたちはだかり彼らの脅威となった。一度目の戦いで転送機のコントロール権を握ったテラナーたちだったがメタン人は再度攻撃を仕掛けてくる。彼らの船艦のグリーンバリアは超強力で通常の攻撃では崩すことが出来ない。ローダンはテレポーテーション能力を持つミュータント部隊に望みをたくすことにした。内側からの破壊だ!

 メタン人との決着がついにつく。

ミュータントたちの掛け合い

 この話ではミュータントのグッキーとタコとラスが宇宙空間に漂流するという窮地に追いやられてしまう。サブタイトルにもなっている虚空の死だ。テレポーテーション能力でなんとか見知らぬ船艦へたどり着くもそこは敵対勢力アコン人の船で捕虜としてつかまってしまう。

 とまあピンチ続きなのに彼らのユーモアセンスは衰えない。なんとかなるとでも思っているのか楽観的で冗談を言い合っている。こんな精神構造でないと宇宙での活動は無理なのだろうけど。

「何してんだ? 起きてるのか?」
「冗談の交換さ」グッキーは苦にがしく答えた。「何か知ってるかい?」
「そうさな、カンガルーの話なんだが。うっかり子供を紛失して、代わりにネズミ=ビーバーを袋にいれちまったやつ……」
「わかんないなぁ、なんでテラナーっての、いつもおんなじネズミ=ビーバーの冗談をしゃべって、しかも笑うんだろ」グッキーはかんかんだった。

 でも本当になんとかなってしまうから彼らはすごい。

メタンズの生命力

 メタンズの一番の長所はその生命力だ。二度目の戦いで彼ら船艦は大破してしまうのだがかろうじて五機の宇宙船が脱出する。そしてメタンガスの惑星に着陸しアコン人から救援物資を受け取るとあっというまにコロニーを作ってしまう。ちょうどよい惑星の発見と協力者の出現は運がよかったからかもしれないがそれ以降の活動は彼らの驚異的な生命力のたまものだ。絶滅寸前になっても生きねばと固く誓い仲間同士助け合ったのだろうか。彼らには情緒というものは存在しないのだが。

ローダンの意志

 ミュータントを危険な任務に送り出してしまったローダンは彼らの行方を懸命に探す。彼らの所持している酸素が尽きる十日目を過ぎても希望は捨てない。これは諦めない強い心を持っているというより非情な現実から目を背けようと必死になっているようだ。このあたりは人間っぽくて親近感が沸く。

 アトランが五千隻の船が探しているのだから我らクレストIIは捜索から抜けてもいいのではと問いかける。しかしローダンはそれを拒否するのだ。

「大差があるね、アトラン。ミュータントたちが発見されて、われわれが現場にいなかったら、かれら、考えるだろう。ことにグッキーは。それを避けたい。われわれが早期にあきらめた場合、親友たちでも疑問に思うだろうな。われわれが信頼できるかどうか、と。われわれが些事をおいて、自分の生命をかれらのために投げださなければ、だれがわれわれのために一身を捧げてくれるだろう? アトラン、わたしは残る。<クレストII>も」

 
 うぉー!


 かっこええ!

 自分の意志に対する後付け的な理由なのかもしれないがとっさにこんな気の利いたセリフが出てくるのはさすが切り替えスイッチ内蔵人間である。

おわりに

http://www.flickr.com/photos/35067687@N04/10806128664
photo by NASA HQ PHOTO


 先日のニュースで若田光一さんがソユーズに乗って四度目の宇宙へ向かった事が取り上げられていた。来年三月には日本人初の船長になるそうだ。若田さんはペリーローダンになったのだ。いいなぁ。大きくなったらローダンになりたい。