マトリョーシカ的日常

ワクワクばらまく明日のブログ。

錆びないステンレスはないという話と和田一郎さんの本について

 あたらしい雨が降っている。外が暗いのでそれがどんな形をしているか見ることは出来ないが、きっとあたらしいのだろう。

 今日は溶接機を使ってばちばちと金属をつなげ合わせた。溶接と聞くと大きなお面を被ってアークを飛ばす様を想像するだろうが、私が操作するのはかなり小さい機械なので、ばちばち言わない。その代わりピロリンと音がする。ステンレスを溶接すると焦げ目ができる。こいつを放置すると錆に繋がるらしい。除去するにはいくつか方法があるらしいが、手っ取り早いのはごりごり削り取ってしまうことだ。社内でヴィーヴィーと呼ばれているヴィーヴィー音の鳴るグラインダーを動かし、ステンレスの棒材をなめらかにした。私以外だれもいない部屋でヴィーヴィーが鳴り響く。そのときはまだ晴れていた。

 帰宅すると、和田一郎(id:yumejitsugen1) さんから本が届いていた。以前、彼のブログで

今回、もし、ブログでこの本を紹介してやろうという方がおられたら、発売後、なるべく早く、本を献本させていただきますので、メールアドレス、TwitterのDMなどでご連絡ください。

2作目の本の予約開始!長すぎるタイトル、略して『ぼくつま20』 - ICHIROYAのブログ

と書いてあったのですぐさま「ください!」とメールをしたのだ。そうしたらほんとに届いた。すごい。タイトルは少し長いので書かない。

 本日二度目のコーヒーを入れ、いつものお店で買ったたいやきを用意した。そうして本を読むことにした。前回一郎さんが出した本は、脱サラして後悔したことを箇条書きにまとめるスタイルで、ブログに近いものがあった。しかし、今回は退職して今の商売が軌道に乗るまでをノーカットで語っていた。自伝のそれである。冒頭の部分はなんだか聞いたことがある箇所だったのでおいおいに読み、中盤からじっくり読んだ。楽しかった。

 なんにせよ、ノーカットなのである。たいがいのビジネス書は成功しか語らない。そこにある失敗談は物語に活かせる部分だけを切り取ったものであり、インスタグラムよろしく加工されている。そういった文章はきつけ薬のように読むだけで全能感に浸れるのだが、あいにく翌日には持ち越すことはできない。一方で、一郎さんのストーリーは編集をされていない。そのため、退職、妻や両親への説得・説明、ビジネスプランの模索、エスニックショップの立ち上げ、土壇場のとりやめ、古着の販売、ライバルの台頭、ウェブサイトの立ち上げ、従業員とのトラブル……と全部読むことが出来る。当初の計画は崩れ、先が見通せない中でもがむしゃに頑張る一郎さん。この本によって得られるのは著者に対する親近感だったり、純粋な好奇心だったりする。

「こんなに全部おおっぴらに書いてくれる人はなかなかいないよなぁ」そんなことを思った。

 会社を辞めてからぼくはしみじみと思うのだが、必要な人を見つけ必要なことについて教えを請うということは、一番大切なことではないだろうか。

 
 教えを請うことはこの本のキーになっている気がする。一郎さんははじめから専門的な着物の知識があったわけではない。それこそ手探りの状態から始まったため、その道の先輩に聞いてまわった。少し考えると当たり前かもしれないが、私たちは一人ですべてを行うことはできない。誰もが何かを持っていて、何かを持っていなかったりする。欠けている部分は人に頼るしかない。はじめから100点なんてとれるわけがない。大枠をつくってしまい、あとの細々したものは適宜継ぎ足せば良い。そんな考えが必要なのかもしれない。

 まとまりのわるい話になった。最近は近場にワクワクが群生しており、くうに困らない生活が続いている。数年前から徐々にチャンネルが面白い方向に切り替わって来て、なにかが起こりそうなそうでもないような気がする。まだまだあやふやなイメージだが、将来はつくってわくわくしようと思う。おわり。