献本ありがとうございます。
本を頂きました。小林和明著『農と農のほんとう 自給自足という生き方の極意』です。彼はもとは鉄道や、建設会社に勤めていましたが、2007年に家族とともに東京から長野県へ移住しました。現在は地域福祉や山林整備、不動産仲介などをして生計を立てているようです。
これは自給自足のHow to本ではありません。また、彼自身の体験談でもありません。農作業のいろはや地域の人とのかかわり合い、長野へ移住した動機等は記載されていないのです。それは目次からもわかると思います。
- 序章 農のほんとう
- 第一章 自給自足の心と脳
- 第二章 個人と社会の間抜けな関係
- 第三章 ふつうと理想のねじれた関係
- 第四章 問題対わたし
- 第五章 不愛知の哲学
- 第六章 脱・社会依存症
- 終章 「はなし」の終わりに
僕は一度精読するまで、この本のジャンルや目的、内容が分かりませんでした。僕なりに目次を書き換えてみました。
- 序章 すべての社会問題は自給自足で解決する
- 第一章 自給自足の歴史と百姓の幸福
- 第二章 現代社会で狂わないための自給自足
- 第三章 現実としての金と労働、理想としての自給自足
- 第四章 時代に流されるあなたと、流されない自給自足
- 第五章 自給自足が教えるあなたの価値と、価値の分類
- 第六章 脱・社会依存症
- 終章 「はなし」の終わりに
つまるところ。本書は自給自足を行っている一人の人間の覚え書きです。なにくそ、耕作の極意を盗んでやる!と肩肘を張って読むのはやめましょう。文面の要所要所をつまみぐいして、時間をかけて自分のものにしていけばいいと思います。
著者は曰く、本の内容は「はなし」以上で以下でもないとのこと。
この書を読んで、もし「はなし」以上に何かを感じたとしたら、それは早合点です。いずれ失望に変わります。それは「はなし」以上に何かを入れていないからです。この書を読み、興味を持った分野のいろいろな本を読めばわかります。
逆にこの書を読んで「はなし」にならないと感じたら、それも早合点です。いずれ希望(希な望み)に変わります。それは「はなし」に、なるべく関連づけを確実に入れているからです。この書を読み、疑問に思った分野のいろいろな本を読めばわかります。
文中には言葉の意味の解釈や、例え話などが多く載っています。難解な箇所も多数あって、「この箇所はどの文献からとってきたのだろう」と思うことがしばしばありました。どうせなら、「分野のいろいろな本」を参考文献として載せて欲しかったです。
普遍性
著者は普遍性をえるために、自身の経験を抽象化し、この本を書いたそうです。しかし、僕の考えでは、普遍性は個人でつくり出すものではありません。それは時間と社会によって生み出される、一種のコアであって、著者は普遍性なぞを考える必要はないからです。カエサルは普遍性をつくりたいがために、ガリアを制圧したのでしょうか。紀貫之が帰京の道のりを歌ったのは普遍性のためでしょうか。万人を真理へと導くために、シェイクスピアは戯曲を書いたのでしょうか。それらはまったくのまちがいです。
そして普遍性は難しい言葉ではなく、簡単な言葉に宿ります。意味の狭められていない無垢な言葉に。
こちらからは以上です。
- 作者: 小林和明
- 出版社/メーカー: ぷねうま舎
- 発売日: 2014/04/22
- メディア: 単行本
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