マトリョーシカ的日常

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【書評/感想】あなたがモチベーションとするのは何か/「DIVE!!(下)」

ついに決着

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DIVE!!〈下〉 (角川文庫)

 飛び込み競技のシドニーオリンピックの出場権を手にした要一であったが枠が三人から二人に減らされたこと、予定されていた選考会を行わずに代表を決めたことに全水連の会長に抗議した。その結果能力が段違いの寺本を除くあと一人の枠をシドニー五輪代表者選考会で決めることになった。条件は600点以上をとって優勝すること。果たしてシドニーへ行くのは知季か飛沫か要一かはたまた……。
 青春スポ根小説の下巻!一晩で一気に読める。

様々な人間の内側をのぞきこむ

 僕がこの本の中で一番お勧めしたいことは様々な人間の内面が描かれているところだ。普通の小説は主人公の心情の変化やバックグランドを中心に進められていくがDIVE!!は違う。軸となっている知季や飛沫、要一はもちろんのこと彼らをとりまくコーチや友人や彼女や元彼女の想いも一緒くたに書かれている。これだけの人たちの物語を限られたページ分で表現する技術はすごいと思うし、僕は普段人と深いところまで話さない分何だかお得感がある。

 例えば知季と同じ世代で飛び込みを始めたものの自分には才能がないと感じたレイジ。彼は知季がどんどんと力をつけて突っ走っていく背中を眺めながら自分の落としどころを探している。また要一の父親でありコーチである敬介はコーチと父親の狭間で要一の成長を見守っている。知季の彼女を奪った弟のヒロはひとつのことをとことん取り組める兄を尊敬していた。

 人の数だけ物語がある。これほどスピンオフを書いてほしいと思った作品はなかったなぁ。

三人の主人公から考える、モチベーションの分類

 知季と飛沫と要一。彼らは飛び込みという共通項があるが身なりや性格が全く違う。その違い用はコーチである敬介が彼ら三人を比較している描写を読むと分かりやすい。

 知季はまっさらな子だ。あるい意味、空疎とも言える。
 (中略)
 多くのものを受け入れ、自らの中にたくわえていく余地がある。

 反対に、飛沫の中にはすでに一寸の余地もないほど多くのものがつまっている。

 そして要一は(中略)つねに自らを追い込み、孤独の淵のぎりぎりのところに立って、初めて力を発揮する。

 彼らの動機付けは三者三様、全く違うのだ。トモキは外部の正のエネルギーから。飛沫は外部の負のエネルギーから。そして要一は内部の負から。しかし目指すものは一緒だ。内面の正の部分、成功体験である。
 
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 あなたのタイプはどれだろうか。考えてみると面白い。ブログ書きは要一タイプが多いかもしれない。内にこもったもやもやを発散するイメージ。

おわりに

 いったい誰がシドニー行きのチケットを手に入れたか。それは本を読んでのお楽しみとしておきたい。十年以上前の小説なのに色あせないなぁ、っていうことは前も書いたか。DIVE!!を読んだのはこれが三度目なので話の大部分は覚えていが、感動する部分が少し変わった気がする。自分が成長するごとに本の内容が変化する気がする。全成分を吸収したときがその本を捨てる時なのだろう。果たしていつになるのか。