マトリョーシカ的日常

ワクワクばらまく明日のブログ。

健全な曇りある眼/ローマ人の物語21

 ネロが自死した翌年は、皇帝が三人現れては消えていった。一年のうちに国のトップが三たび変わったのだ。不安定と表現するには生温い。ガルバ、オトー、ヴィテリウス。みな悪人というわけではない。ただ、各人の短所がタイミングよく働き時代の流れに押しつぶされてしまった。さっと湯通しをするくらいのスピードで、シャキシャキ歯ごたえの要約をしてみる。


 皇帝となったガルバだが慢心の塊のような人物だったので評判が悪かった。市民に配るべきボーナスを出し渋ったり、人事を身内で固め、有能なよそ者は排除した。人心掌握の重要度を理解していなかった皇帝に反乱の手が上がった。屈強なライン軍団が反ガルバを態度を明確にした。リーダーとして担ぎ上げられたヴィテリウスは、彼らとともにガリアを南下しローマを目指す。

 一方、度重なるひどい人事に堪え兼ねたオトーは、ついにクーデターを起こしガルバを殺害する。ほっとしたオトーだったが、彼を待っていたのはライン軍団との戦闘だった。オトー側にドナウ軍団が味方につき、戦争はライン軍団VSドナウ軍団の様相を呈す。これに敗れたオトーは自死した。次の皇帝になったヴィテリウスだったがグータラ過ごしていたらなんか市街戦が起こって死んだ。ヴェスパシアヌスがローマ帝国を再建するお。

 要約おわり。


 三人の皇帝に欠けていたものは何か。

 つまり、紀元六九年の内乱の解決には、百二十年昔のように新しいシステムを創造する場合ならば必要な天才型の人物、カエサルやアウグストゥスのようなタイプの人物は必要ないのである。創造力は劣っていても、今何が必要か、を曇りのない眼で直視し実行できる、健全な常識の持ち主であれば充分なのであった。

 著者の塩野七生さんは、健全な常識があれよかったねー、と言うが彼らは健全さを持っていたと思う。いや、人間らしさというべきか。ある朝目覚めたら巨大帝国のトップになってて、お金や権力を好きに使える。そんな立場に置かれたら、普通の人なら誰でも狂ってしまうものだ。

 非常事態においても『健全な常識』を失わないのは常人ではない。そのような器がないと、ローマのトップに立つのは難しいのだろう。

 ガルバ、オトー、ヴィテリウス。彼らを悪く言うことなんてできないし、したくない。大変な時代に担ぎ上げられてしまった彼らに、しんみりとした想いをはせる。


ローマ人の物語〈21〉危機と克服〈上〉 (新潮文庫)

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