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【書評】心にひとつ、言葉をもつ。/「中原中也詩集」【感想】

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 誕生日だからなんかくださいと書いたら、ルナさうるす (id:lunasaurus)さんから『中原中也詩集』をいただきました。ありがとうございます。

 詩のいいところって言葉をしまっちゃえることだと思うんですよ。気に入ったフレーズを頭の中に保存して、辛いときやしんどい時に唱えることができちゃう。言葉の意味が分かるか分からないかは問題ではありません。大切なのは、口に出すと心地よい気分になれるかどうかです。


 中原中也さんの詩は、四季の移り変わりを遠いところから観察している作品が多いです。しかしところどころに、感情の赴くまま自身の筆をぶつけている作品があります。僕はそれが好きです。有名どころですが、「汚れつちまった悲しみに」はやっぱり名作ですね。

汚れっちまった悲しみに…… : 中原中也・全詩アーカイブ

 この作品は人によって解釈が分かれると思います。悲しみが汚れているのか、それとも汚れてしまったことが悲しみなのか。けれども、言葉のリズムがそんな考えを吹き飛ばしてしまいます。また単語の選び方もかっこいいです。真面目だった青年がどこか世間に対して斜に構えているような。ちょっとアンダーグラウンドな、ハードボイルドな。そんな感じで。

 中原中也さんは1907年に生まれましたが、わずか三十年しか生きていません。1937年というと、第二次世界大戦はまだ終わっていません。日本もまだ戦争ムードに巻き込まれていない頃です。

 江戸時代がおわり、明治から戦前にかけての時代のすきまを彼は生きていました。そのため、彼の言葉は歴史上の偉人のようなかけ離れた味わいもなく、一方で現代に生きる著名人のような存在感もありません。ひとりの観測者がつぶやいたひとりごとを聞いているようです。それが今の季節に感じる風のように心地よいのです。

 あと、巻末の年表が面白いです。落第したり、恋人を知り合いに寝取られたり、警察にお世話になったりと、非常に濃い人生を送っています。


 短いですがこれで終わりにします。改めて、ルナさうるす (id:lunasaurus)さん、ありがとうございます。


中原中也詩集 (新潮文庫)

中原中也詩集 (新潮文庫)

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