インドラ率いる良い人同盟は、ヴリトラら悪の組織の攻撃に苦戦していた。インドラが梵天になにか良い方法はないかと聞くと、梵天は「ダティーチャ聖仙の骨を使って金剛杵(ヴァジュラ)を作りなさい」と答えた。良い人同盟はさっそくダティーチャ聖仙のもとへいき、骨をくださいと頼んだ。いいよとダティーチャ。彼はぽっくり逝った。みなは彼の遺体から骨を取り出し、トゥヴァシュトリ(わくわくさんの神)を呼んで武器を作らせた。できた。やったー。
ヴァジュラを手に入れたインドラは悪の組織に攻め入った。ヴリトラはその最強武器の存在を知り、大きな雄叫びをあげる。全天地が振動した。恐怖に駆られたインドラはあわててヴァジュラを放った。(ヴァン!)ヴリトラはヴァジュラに撃たれて死んだ。リーダーがやられたことで士気が下がったアスラたちは続々とやられる。残ったアスラは海の底へ逃げ込み、全世界を滅ぼすための策略を練った。
「学術と苦行(功徳)を積んだ者たちをまず第一に殺すべきである。全世界は苦行によって維持されているから、修行者たちを殺せば、世界は全滅するのだ。」
そういうわけで彼らは多くのバラモンを殺害した。それによってみな勉強をしなくなり、文明は衰え、世界は活気を失った。わけがわからない神々は危機感を抱き、ヴィシュヌ神に相談した。先生、最近の若者が勉強をしないのはなぜですか。世界を包みこむ絶望の正体は一体なんなのですか、と。ヴィシュヌ神は答えた。
「それは悪魔の仕業だ。ヴリトラとの戦闘の際の残党が世界を滅ぼそうとしているのだ。彼らは海の底にひそんでおり、始末することができない」
「え、じゃあ一体どうすればいいんですか」
「海をなくせばいい。アガスティヤ仙人に頼んで、海を飲んでもらいなさい」
神々がアガスティヤ仙人にお願いすると、彼は快諾した。
「世界の安寧のために、私は海を飲みほす。」
ごくごくごくりと、海をすっかり飲み干し神々は驚き喜んだ。海の底に隠れていた悪魔たちもこれにはびっくり。神々の猛攻でほとんどの悪魔がやられたが、生き残ったものたちは地底界へ逃げた。満足した神々はアガスティヤ仙人に海の水を戻してくれるよう頼んだ。
「ごめん、消化しちゃったから無理」
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