マトリョーシカ的日常

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【書評】ルールは神より強い。/「ギリシア神話」【感想】

初心者向けのギリシア神話です。

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ギリシア神話 (1977年) (旺文社文庫)


 ギリシア神話は読んだことがなかった。神話の中では最もオーソドックスな物語であるし興味はあったが、いざ読もうと思っても膨大な文章量と登場人物に躊躇していたからだ。

 しかし古本屋で見つけたギリシア神話は今までで見た中で一番背表紙が薄かった。著者と出版社の部分は擦り切れているが「串田孫一 旺文社文庫」と読み取ることが出来た。手に取るとくすんだ表紙に小学生の落書きのような絵が描かれている。文庫表紙カバーのうたい文句には「代表的物語32編を選んで、わかりやすく編んだ格好の入門書」とある。目次に目を通すと、オリュンポスの神々、ヘラクレスなど聞いたことがあるワードが並んでいた。文中の語り口も親しみやすく読みやすい。僕は文庫本をパタンと閉じるとそれを手にしたまますぐにレジに向かった。108円だった。


 読んでみるとギリシア神話というのはなんとも不思議な世界観であると気づいた。その世界は全て神によって構成されている。神の中に神が住んでいるのだ。大地や光、大地の下の大穴など全てが神である。大地の下であるタルタロスがゴミ箱のように扱われているのが興味深い。神は気に入らない神がいるとタルタロスに投げ込んでしまうのだ。カイジでは借金を払いきれなかった人々を地下の強制労働施設へ送り込む(地下行き)のだが、それに近いものを感じる。「1050年、タルタロス行き……!!」シゴロ賽を使ってペリカを貯めて出てこなくてはいけない。そんなことはどうでもいい話だ。

 話のキーワードに神託がある。詳しい意味は分からないが運命とか予言という意味合いで使われている。あなたは娘の子供によって殺されるとか、君はあと十二の仕事をこなさないと自由になれないなど内容は様々だ。神様でもその内容はねじ曲げることは出来ないのだから、神託は神よりも神らしい存在である。

 ケルト神話にも神託に似た言葉が登場する。誓約(ゲッシュ)だ。これは戦士たちが設定する「自分ルール」のことで、彼らは王や貴族の前で一人ひとつずつ生涯守り抜くルールを宣言する。内容は「飲み会は絶対に断らない」や「王が出した食べ物以外は絶対に口にしない」などがある。なぜこんなルールを設定するのか僕には全く理解できないが、ゲッシュによりケルト神話は格段に面白くなる。

 誓約と聞いてクラピカを思い出す人はかなりのハンター×ハンターオタクだろう。その漫画には念という超能力の類が登場するが、念は誓約と制約を付け加えることでより強力なものになる。クラピカは制約として自身の能力を特定の人間に対してのみ使うことに決め、誓約としてその制約を守らなかった場合は命を落とすと誓った。結果として彼の能力はすさまじい力を発揮し、敵対する人間を次々に倒していった。

 以前いつものコーヒー屋で本を読んでいたら、となりの席の女子高生たちが校則に対する愚痴をこぼすのが耳に入った。生徒指導の先生が担任になり「まじありえんしー」だそうだ。聞いていて懐かしい気分になった。校則があるからこそ彼女たちは知恵を働かせる。土日だけ髪を染める、先生の見えないところでオシャレをする、ケータイはバレないようにかばんの奥深くに隠す。なんとエキサイティングな学生生活ではないか。

 規定の枠があると中の要素は圧力を増す。世間ではプレッシャーやストレスまたは重圧などと呼ばれる。それが大きすぎると負に作用することがあるが適度な圧力は良いものである。枠があることで物語は起伏に富んだものになる。

 このブログも毎日更新することを誓約(ゲッシュ)としてここまで続けてきた。四月から新社会人となりブログに掛けられる時間は減った。もしかしたら来週は毎日の更新はできないかもしれない。しかしそこをなんとか工夫して更新を続けていきたいと思う。無理のない程度に。

 書評を書くつもりが結局はありきたりのブログ論に収束してしまった。まぁいいか。

 こちらからは以上です。

ギリシア神話 (1977年) (旺文社文庫)

ギリシア神話 (1977年) (旺文社文庫)