マトリョーシカ的日常

ワクワクばらまく明日のブログ。

【書評】そうだ。地獄、行こう。/「神曲」

 生きていく上で一番やっちゃいけないことって何だろう。「悪い人についていっちゃいけません」「好き嫌いしちゃいけません」「片付けないといけません」。親にそう言われて育ったが、ダメな事はそれだけじゃない。犯罪というドス黒い言葉で表されているいくつかの行為がある。殺人や放火、詐欺などがそれにあたる。

 八百年前を生きたダンテは、自作の小説の中で罪深さのランキングを公開している。この話では、ダンテがもの知りおじさんと一緒に地獄巡りツアーを敢行する。薄暗い森からスタートして、漏斗のような形状の地獄を一段一段と降りていく。底へ行けば行くほど罪は重くなる。神を信じないもの、他人に暴力を振るったもの、自殺したもの、高利貸しをしたものなど、罪人はさまざま。彼曰く、最も重い罪は「裏切り」のようだ。

 死者の魂は、それはそれは数えきれないほどあるはずなのに、ダンテは知り合いとよくエンカウントする。著名な政治家や恩師が「あらま!ダンテくん」なんて親しげに言葉を投げかけてくれるのだ。いや、大体はただのたうち回ってる人たちだけなんだけど。

 興味深かったのは、最下層は氷の世界だということ。そこでは神を裏切ったユダや、カエサルを殺害したブルータスが氷漬けにされている。そういえば、「ワンピース」にインペルダウンと呼ばれる海賊を閉じ込めておく監獄があるが、あの最下層のLEVEL5は腕も凍ってしまう冷凍地獄だったなあ。尾崎さんはダンテに影響されたのかもしれない。

 熱さよりも寒さが懲罰としての地位が高い。それならば、雪国育ちの私は地獄に対する耐性を持っているのかもしれぬ。なんて。

 1300年代。科学はまだ眠っている時代の古典。

神曲 地獄篇 (角川ソフィア文庫)

神曲 地獄篇 (角川ソフィア文庫)