マトリョーシカ的日常

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【書評】すべての知性体は大宇宙に住む権利をもつ/「宇宙英雄ローダンシリーズ <109>過去からの脅威」

久しぶりの肉弾戦

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 千分の一サイズになってもなんとかシフトを黄階層にうつしアンドロテストIIIとの通信を図るローダンたち。しかしその通信を敵に傍受されてしまい全長二百キロメートル(相対的な大きさで)の大型船艦が攻めてきた!

 アンドロメダ篇で久しぶりに肉弾戦が繰り広げられる今作。そういえばローダンが実際に戦うのもあまり見たことがなかったなあ。

敵はメタンガスで呼吸するメタン人

 ポテンシャル凝縮装置を利用していた敵の正体が次第にはっきりしてくる。敵はメタンガスを呼吸するメタン人。アルコン人との激しい戦闘の末彼らは絶滅したはずだったがふたたび彼らの前に立ちはだかる。アルコン人であるアトランは彼らの存在を知ると震え上がった。あいつらは感情を持たない戦闘民族。すさまじい繁殖力と戦闘意欲でどんどん攻めてくるらしい。

 挿絵を見る限りではそんなに怖そうではなかったのだが。宇宙服を着たプーさんという感じで。実際は凶暴な存在らしい。

二十三時間マラソン to 八百キロメートル

 今回の一番の山場はこれ。相手の敵船にクレストIIごと捕われたローダンたちだがカソム、トロト、セング、ローダンのみで脱出に成功する。そのときは相手の敵船も縮小していたがあるとき敵船のみ元のサイズに戻ってしまう。クレストIIへの距離は八百キロメートルに。辺りは有毒なガスが漂っており酸素は残り二十三時間分しかない。とてもやばい。

 ここでカソムがある提案をする。時速百キロで走れるトロトがローダンとセングをかつぎカソムがそれに並走するというのだ。トロトは無尽蔵のスタミナを持つが(詳細は省く)カソムはただのエルトルス人だ。今は体力がなく百キロ走るのがせいぜい。

 休憩なんてせず歩きもせず二十三時間で走りきるのだから二十四時間テレビも真っ青である。

 この結末がどうなったか。カソムは死んでしまったのか。それは本作を読んでいただきたい。

大乱闘とローダンの倫理観

 そしてメタン人とチーム銀河との激しい戦闘が起こる。メタン人の乗る超大型船艦からはひっきりなしに小型船が放出され惑星クインタを征服しようとする。クインタには転送機のコントロール室がありこれを占領されると故郷の銀河へ戻れなくなってしまう。これを阻止したい銀河側は八千機の船艦を投入し戦い続ける。

 しかしローダンは彼らを殺すことをためらうのだ。アルコン人のアトランが「早く殺さないとやばいよやばいよ」と彼をうながす。

 アトランはため息をもらした。
「見ているとだな、きみは要塞の破壊を避けたがっているようだ、ペリー。前にもいったが、中途半端なやり方では一帝国を築くことも維持することもできないぞ」
 ローダンの表情が拒絶的になった。
「アルコン人、わたしの見解は変わらない。どんな生物も創造主のものだと思っている。いかに異様な姿であれ、知性体は大宇宙に住む権利をもつ。われわれと同じように。要塞を屠りさるのは不当だと思う。(後略)」

 ローダンの思考は一歩下がったというより常に一段上にある気がする。自分の都合や感覚にとらわれず大きな法則に則った行動を心がけているような。これが彼を太陽系帝国の大執政官にさせているのかもしれない。

おわりに

 ローダンシリーズがだんだん面白くなってきた。しかし昔の作品は絶版で中古本を探すしかない。amazonで買うのも高いしな。面倒だなー。



 過去からの脅威とはたぶんメタン人のこと。