誰もが持つ闇
乙一フェア第二弾はこの本を紹介する。殺人の容疑をかけられたアキヒロが盲目の女性ミチルの家に逃げ込む。ミチルはアキヒロの存在に気づきながらも知らない振りをする。そしてアキヒロも彼女の対応の意図を理解はしているがそれを表にだすことはない、というなんとも不思議な共同生活を行う。人間の誰もがもつ闇をキーワードとして扱った小説。
泣いて笑って驚いた。小説において大事なものがコンパクトにまとまっていると感じた。
盲目でブログはかけるのか
本を読みながら盲目の人たちの生活に想いを馳せた。彼らはどうやって生きているのだろう。目が見えないってことはネットもできないし、本も読めないし、スマホもいじれない。ブログもプログラミングもできない。もしも僕が盲目になったらなんとかして電子書籍読み上げソフトを探し出したい。
一番困りそうなのがブログが書けないことだ。だれかの記事を読んで言及してidコールしてPV数増えてやったーなんて行動は全て視力に依存していて目が見えないのはとんでもないハードルなのだと感じる。記事は棒読みくんなどで読み上げてもらうとして、書くのはどうすればいいのかな。声に出すとタイプしてくれるキーボードまたはパートナーが欲しいな。でも「ちょっおまっwww」とか呟くのは恥ずかしい。
ネットはもっと目の見えない人が使いやすいように工夫すべきだと思う。振動で文字が認識できるようなデザインとか。
他人の助けを借りると弱くなる
そうだった、本の感想を書かなくては。アキヒロとミチルはなんの共通点もないように思えるがそうでもない。二人は共に友達をつくりにくい性格で自分と他人との間に壁をつくりたがる人間だった。アキヒロは友人関係を作るのが下手で職場でも孤立している存在。ミチルは目が見えなくなってからなるべく人と関わらない生活を送っていてほぼひきこもりだ。
ミチルは他人を頼ると自分が弱くなってしまうと考えている。僕もああそうだよなと感じながら読んだ。近場に人がいるとどうしても頼ってしまう。昔は一人で出来たことが出来ない。一人が平気だったのに孤独にやられそうになる。弱くなるというのは怖いなあ。
しかし二人ともやだやだと思いながら本当はだれかとつながりを持ちたいと感じている。不思議な共同生活を送るうちに二人の距離が徐々に詰まっていくのは心がほんわりする。
自分ではない他人がいるのだということを、なかったことにはできない。お互いがお互いをいないことにすることなどできなかったのだ。二人ともお互いを知っていると気づいた瞬間から、たとえ無視しようと、すでにふれあうことは始まっていた。
泣いた。
未知数と方程式の数が同じ
夏と花火と〜でも同じ印象を持ったが、この小説は未知数と方程式の数が同じだ。わからないことが全て明らかになり意味のないパーツはすべて意味が付けられる。余すところなく小説内ですべて表現してくれるので、深く考える必要もなく読み進められる。二人の距離感が縮まるよー辺りまではハートフルなほっこり小説でしかなかったがアキヒロの発言によって物語はクイックターンをする。どうなるの、どうなるのとぶあああと読んでいくとははーんと終わる。なるほど納得となって本を閉じる。擬音が多い。
おわりに
誰もが暗さをもっている。幸せそうに見える人も普通の人も。この小説は、その暗さを克服するんだ!という姿勢ではない。淡くいい感じにフェードアウトしていく。
いい小説だった。乙一フェアはまだまだ続きます。