ふいに「どっこいしょ祭り」という言葉が頭から降りてきた。きっと、けんか神輿の対極をなす平和的な祭りなのだろう。私はどっこいしょ祭りについて深く言及したくないので、この話はとりやめにしよう。WIREDのことを書こう。先週WIREDの十一月号を買ってきた。テーマは「言葉の未来」で、言葉がもつ曖昧で普遍的な力を理解し、活用していこうぜという内容だった。私はなるほどと思いながら読んだ。まだ全部読んでいないので、あと数回はなるほどと思うはずだ。
考えてみると言葉というのは不思議なものである。声帯の自由がききはじるめると、人類は自らの声でもって相手と交信をはじめた。だれかに規定されたわけではないのに、みな勝手にしゃべりはじめ、自然になにかに意味が付加されていく。大事なものは表現の幅が広く、それほどでもないものはそれらしい幅で居座る。声を使った交信は動物たちの間でも行われている。それに加えて、人間たちは文字を書くことを覚えた。言葉を残す行為によって、時を経ても意味が損なわれることなくなった。ジップロックコンテナに入れた。もし文字がなかったら、私はこうしてブログを書くこともなく、ただ毎日漫然とマンモスを狩っていただろう。
コンピュータは言葉を理解できるか、という特集が掲載されていた。コンピュータの記憶力は半端ではないので、英単語ターゲット1900くらいなら丸暗記することは容易だ。しかし、彼らは曖昧に動くことを知らない。よって私たちが英語教師となって一から文法や構文を覚えさせなくてはいけない。今までコンピュータへの英才教育はそんな風になされていた。
最近はちょっと方法が変わってきたようだ。統計をつかって、文章の意味合いをコンピュータに学習させるというのだ。二カ国語に翻訳された同じ文章を彼らに読ませて、単語の位置や出てくる頻度からどれとどれが一致するのかを学ばせる。なんだか昔の人がやっていた学習法と似ている。もしコンピュータが言葉を操れるようになったら、わりと楽しい未来がやってきそうだ。英語の勉強はコンピュータにまかせて、受験生はもっと楽しい学生生活をエンジョイできる。社内の公用語を英語にする必要もない。やったね。
でも、そうやって言葉の根源を突き詰めていくと、どこかで立ち止まらなくてはいけない。それは「にんげんってなに」とか「ことばってなに」という単純な疑問によるものだ。楽をしよう楽をしようと努力するほど、根本的な障害に近づいているような気がする。きっとその先には楽しい未来があるのだけれど。
WIREDを読んでいると、「その雑誌、毎回買うけど何について書かれているの」と聞かれた。「うーん、いろいろ」と答えた。ちょっと悩んだ。
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