二十五を迎えてから敏感な体になった。肌感覚が研ぎすまされたとか、そんな意味合いではない。疲れやすくなったわけではない。無理が効かなくなってきたのだ。
例えば、以前は好きだったペヤングやきそば(大盛り)も、完食する前に胃がもたれてくる。香ばしい匂いと感じたあれらは、実は不健康万歳な添加物の固まりで、僕の体を浸食していることに気づいた。また、クリームメロンパンも食べられなくなった。砂糖の雲海を抜けたと思ったら、目玉が解けるほどに甘いクリーム地獄で、半分も満足に口に入れる事ができない。
さらに、風呂あがりのストレッチをさぼった次の日は体全体がガチガチになっているし、夜更かしするとすぐにくまができる。白髪は先月から指数関数的に増えてきたし、朝は枕に抜け落ちた髪の本数を数えながら起床する。後半は敏感とは関係ない。ただの老化現象だ。
しかし、嫌な事ばかりではない。体が敏感になったため、フィードバックがすぐにかえってきて楽しいのだ。「あ、今日の疲れはあれが原因か」「昨日肉ばかり食べたからかな、体調がよくない」など。鋭敏な感覚は、瞬発力のある意志を生み出す。
「意志とは何ですか?」と僕は訊ねてみた。
「空間を統御し、時間を統御し、可能性を統御する観念だ」
『羊をめぐる冒険』の中で行われる、僕と男の会話である。そのようにして、意志は統御する観念であるから、意志が決まれば世界はきちりと並び合う。意志が行動に結びつかないよ、という意見もあるかもしれない。しかし、Aするかしないかに二択を悩むのは、意志がその問題の枠組みを作ったためなので、これはもう意志のパワーにひれ伏すしかない。
敏感な老化によって、センシティブなイノベーティブを起こそう、という話。
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