シャッターが開く音がして目が覚めた。まだ頭はぼやけていて、手足の不自然なしびれに違和感を覚えていただけだった。何やら明るいものが遠くのほうに存在しているようだが、それはどうでもいいことだった。
シラバスが欲しいなと思った。卒業まであと何単位必要で、そのためにはこの曜日にあるこの科目をとるのが最も優れている選択だ、なんて決定づけてもらいたかった。まだ若いのに過去を振り返りたがるのは良い傾向とはいえない。僕は進む必要があるから。何に?何かに。
入社してから数えて三度目の残業をした。今日は皆既月食があるというのに、PCのモニタばかりみていた。あれをこれして、これをあれする。単純作業は頭を鈍らせる。それでも脳内の変な部分は精度が高まっていき、昔の事を考えたり、未来の事を予想したりした。彼らが投げかけたあの言葉の意味は何だろう。十年後は何をして過ごしているのだろう、と。
残業後の高揚感をなんとかしたい。あれらがきっと僕らをしばりつけている正体なのだろう。
月食をみた。
- 作者: 森光伸,光村推古書院編集部
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- 発売日: 2006/03
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