マトリョーシカ的日常

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【書評】普通の人間がおさめるローマ。/「ローマ人の物語17」【感想】

 僕は文章を書くのが苦手なので、どこから書き始めようかといつも悩んでしまう。書き出しが難しいのはそれが第一印象を決めるのはもちろんのこと、自分の思考をも束縛してしまうからだ。言葉はものを映すと同時に見えなくする。ないものを表し、あるものを消し去る。一体どこからその力が出てくるのか。不思議でならない。

 そろそろ古代ローマの勉強を再開しようと思う。世界史を学ぶにあたり、さまざまなきっかけやとっかかりがある。数学は断崖絶壁をクライムするように、ひとつひとつ丁寧に知識をつまなけらばならないが、世界史は比較的自由だ。どこからでも、何から始めても問題ない。ただ、やるのなら大きな足場からスタートしたいものだ。そのひとつがローマだ。

 さて、僕が学ぶのはアウグストゥスの次の皇帝、ティベリウスだ。ここらへんは五賢帝時代とよばれるらしく、なかなかに平和だったらしい。「歴代の皇帝の悪口を言うだけで済んでいた時代はローマにとって幸せな時代であったのだ」と、筆者ももらしている。

 ティベリウスはケチだ。正確にはケチな人だと民衆から思われていた。ばらまき政策を止めて、民衆向けの祭典の回数を減らした。アウグストゥスに比べると、特に目立ったハコモノの建設は行っていない。挙げてみると、あまりに民衆には受けない政治家の姿が目に浮かぶ。

 しかし、政治の腕は良かった。彼の使命は新しくなにかをつくることではなく、現状を維持し強固にすることだった。財政の立て直しやインフラの整備など。地味ながら着実に進めていった。

「わたし自身は、死すべき運命にある人間のひとりにすぎない。そのわたしが成す仕事もまた、人間にできる仕事である。あなたが方がわたしに与えた高い地位に恥じないように努めるだけでも、すでに大変な激務になる。


 ふつうの人がふつうにがんばる。それができないんだよなー。

ローマ人の物語〈17〉悪名高き皇帝たち(1) (新潮文庫)

ローマ人の物語〈17〉悪名高き皇帝たち(1) (新潮文庫)