マトリョーシカ的日常

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【書評】半沢直樹的な生き方ではいづれ消滅する/「ロスジェネの逆襲」【感想】

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 地球は生きている。雨の日には特にそう感じる。今朝は小雨が降っていた。通勤に使っている路面はじわりと濡れており、アスファルトの隙間から目玉焼きみたいな花が咲いていた。ねずみの帽子になりそうなピンク色の花もあった。お前そんなところにいたのか、と驚く。いつもさっさと通り過ぎてしまうから見逃していたのだろう。線路にはぐわわと初夏の雑草が茂っている。そうかもうすぐ六月か。

 生かされている。僕は生かされている。誰かがその気になれば、こんな人間すぐに消し去ってしまいそうだけど僕の心臓はまだ動いている。なぜだろう。奇跡が奇跡に重なり合って、折り目に折り目をつけている。細い隙間を僕は歩いているはずだけど決して落ちない。いや、他の世界線ではとっくに落ちてしまって、残りはここだけかもしれない。数えきれない確率の波に漂っているてこぎのボート。

 ロスジェネの逆襲を読んだ。半沢直樹が出向先の東京セントラル証券で暴れ回るお話だ。「倍返しだ」は一度しか出てこない。著者もここまでこの言葉が流行るとは思わなかったのだろう。

 物語の終盤で、半沢の上司である内藤は彼をこう激励している。

「日本経済が発展する限り、我々に休息はない。そして、安穏とした発展など、この世には存在しない。繁栄は勝ち取るものだ。銀行もまた同じ。

 「そのために君の力が必要だ、半沢」と続く。ちょっと待って欲しい。繁栄は勝ち取るものなのか、もっとゆるやかに事を済ませられないものか。戦うのは嫌いだ。ひょっとすると、今のおじさんたちは勝つか負けるかで人生を考えているのだろうか。

 以前、大学で集中講義を受け、ある製作物をつくった。指定された仕様は満たしたはずなのに、参列していた企業の方から「それじゃあ他人に勝てないぞ」と言われた覚えがある。まじか。満足に動けばいいとは限らないのか。はっきりとした目標のない作業に対して勝ち負けをつけてしまうのか、あなたは。

 ライフゲームというシミュレーションモデルがある。オセロのマス目のひとつひとつに生死が裏表に並べられている。隣り合うマスの三つが生だと誕生し、二つだと生存する。一つ以下だと過疎で死に、四つ以上だと過密で死ぬ。

ライフゲーム - Wikipedia

 このシミュレーションではずっと生きているパターンがいくつか発見されている。そのどれもが単体ではなく、何体かが集団をつくっているのだ。

 繁栄は勝ち取るものではない。共に生き抜くものだ。間伐を行う必要は確かにある。しかし自分たちに優劣をつけたり、他人を根絶やしにするのは決してよいことではない。

 よいことではない。

 誕生日プレゼントありがとうございます。

ロスジェネの逆襲

ロスジェネの逆襲