マトリョーシカ的日常

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【書評】本を読むことは面白い。今もむかしも。/「私の読書」【感想】

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私の読書 (岩波新書)


 長い、長い一週間が終わった。慣れない立ち仕事を五日間こなしぱんぱんになった僕の足はすでに悲鳴をあげている。しかしここからもうひと頑張りして本の感想を書くことにする。『私の読書』は十六名の人が自身の読書術、あるいは読書にたいして語っている本である。元の文章は1981年12月から1983年7月までの『図書』に掲載されていたものである。医者や小説家、数学者などバラエティー豊かな人々がそれぞれの読書にたいする熱い想いを語っている。

 初版は1983年10月であり、古い本だ。僕がこれを購入した理由は『知的生産の技術』の中でこの本が紹介されていたからだ。しかし実際にはそれは間違いであり、紹介していたのは『私の読書』ではなく『私の読書法』であった。「しまったなぁ」と顔をしかめながら読み進めると、なかなかどうして面白い。学生時代に岩波新書を片っ端から読んだことや、本の増殖に頭を悩ませるエピソード、理解のない妻との戦い。読書の対する思想や出来事は今も昔も変わっていないのだ。

 色あせたページに万年筆で線を引いていく。カスタムヘリテイジ91の銀色のペン先から染み出るそれは、パーカーのブルーブラックだ。左手には濃いめに入れたコーヒー。湯気がほんのりと立ち上っている。静かな室内には風呂場の換気扇の音が響いている。遠くではカンカンと踏切がなっている。だんだんと夜が近づいてきた。

 こんな時間がたまらなく好きだ。死ぬまでに一体何冊の本が読めるのだろう。何杯のおいしいコーヒーが飲めるのだろう。何本の万年筆が持てるのだろう。適当な速さで僕は終わりに向かう。