マトリョーシカ的日常

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【書評】読書は進化しないよ。/「読書進化論」【感想】

読書論の類ではない。

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読書進化論‾人はウェブで変わるのか。本はウェブに負けたのか‾ (小学館101新書)

 いつもの古本屋でこの本を見つけた。「本を読む本」や「読書について」を読んでから、いわゆる読書論について興味が出てきていた。表紙裏には「ウェブ時代の『人生を変える本の使い方』を、自分自身の歩みと重ねながら、ていねいに紹介」という謳い文句が書かれていた。ぐっときたので買うことにした。108円だった。


 しかし読み進めるごとに違和感を覚えた。矯正をしたばかりの噛み合わせのような、気持ちの悪い感覚。分かったのはこの本は読書論の類ではないということ。ウェブの登場で本の読み方がいかに変わったかを論じている訳ではなかった。読み方ではなく書き方または売り方に着目しているのだ。

 著者は「新しいウェブ時代の読書論」の基軸として以下の三つを挙げている。読み方の進化、書き方の進化、そして売り方の進化だ。しかし読書論の本ならば書き方や売り方をグダグダと述べる必要はない。僕は著者が本当に書きたいのは、ウェブ時代による効果的な本の売り方だと思った。力の入れ具合から見てもそれはよく分かったし。

 とにかく、これは読書論の本ではない。

売れる本をいかに作るか

 しかしこれは決して悪い本ではない。良いこともたくさん書いてある。僕が一番ためになったのは「相手がわかりやすく読みやすく書くための四つの技術」だ。第三章135ページの中ほどからおよそ10ページ弱。もうここだけで一冊の本にする価値はある。

  1. 「自分の事例」「アンソロジー」形式を利用して親しみを持たせる
  2. 「役に立つフレーズ」を必ず入れ、読書だけに体験を閉じない
  3. 「共通体験」や「流通していることば」を使って行動を促す
  4. 「コンテンツ力」と「編集力」で進化していく

 読んだ限りでは、「PV数を増大させるための文章の書き方」と銘打ってもおかしくはならない。この四つの技術をうまく使えば読者のハートをがっちり掴むことができるはずだ。これらの技術の核となるのはいかに文章に自分の体験を落とし込めるかどうかだ。

 僕の文章を読み直すと、一般論ばかりで自分の体験に落とし込むという作業をしていないと気づいた。僕は自分の身の上話を書き始めたら終わりだと考えている節があって、本とか文房具とかはっきりとしてネタがないと文章が書けないのだ。考え方を論じるのなんて絶対むり。

 でも、体験談が混じると記事に親近感が沸いていいのかもしれないなあ。

正しいタイトルは「ウェブ時代に売れる本の書き方」

 この本は良いこともたくさん書かれているのに、タイトルでひどく損をしている。著者は進化という言葉を使いたかったのだろうが、無理やりねじ込まれていてかえって構成が窮屈なものになってしまっている。もっと素直に「ウェブ時代に売れる本の書き方」とでもしておけばよかったのだ。記事では紹介しきれなかったが、筆者は本のマーケティングについて、アドワーズやブログなどウェブを有効に利用する方法を説明している。自身が執筆した本の売れ行き等が詳しく載っていて非常に面白い。

 あと気になったのは意味のとりづらい言葉が多かったことだ。全編を通して読んでみても、フレームワークや進化がどんなことを言っているのか分からなかった。

 恐らく著者は頭がいいのだろう。本には線を引かずに、気になったフレーズを頭の中にタグ付けしてしまっておけるほどだから。しかし悲しいかな、僕らはバカなのだ。ビジネス書を沢山読んでも内容を覚えておける訳はないし、書いてあることを咀嚼して実現可能な行動に置き換えることも出来ない。

 本にはじゃんじゃん線を引こう。忘れるためにメモをとろう。そして書評をどんどん書こう。自分がいかにバカであるかが分かるよ。