マトリョーシカ的日常

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【書評】学習の高速道路の終点で僕は何を残すか。それ以前にSAから出発できるか。/「ウェブ進化論」【感想】

はじめに

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ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)

 この本を初めて読んだのは高校一年の夏休みだった。なぜこんなにはっきりと時期が分かるのかというと当時の夏休みの課題図書だったから。そのころは「へー、ロングテールってやつがすごいんだなぁ」とした感想を抱かなかったが、まさか著者がはてなに関わっていたとは知らなかった。

 著者は次の十年の三大潮流として「インターネット」「チープ革命」「オープンソース」を挙げ、それらの影響によってネット世界の三大法則が成り立つとしている。その法則とは神の視点、ネット上の分身が稼いでくれる経済圏、そしてほぼ無限×ほぼ0=Somethingだ。何を言っているのか分からないと思うが、この人が2005年の当時に今のネットの世界を詳細に予言していると書けばその凄さが分かるだろうか。

 今までの力学では表現できない世界がネット上に構築され、あらゆることが可能になった。現状を理解する上でも、約十年前の新書から今のウェブ世界を見つめ直すことは有用だ。


ブログを知的生産の道具に

 「知的生産の技術」の著者である梅棹忠夫は知的生産の技術でもっとも大事なことは絶えざる自己変革と自己訓練だとしている。技術をつねに見直し、ビルドアップしていくのが肝要なのだ。この梅棹イズムはウェブ進化論の著者にも引き継がれている。

 彼はビルドアップの末、究極の知的生産の道具はブログであると述べた。容量に制限がなく、どこでも閲覧または編集ができるからだ。さらにブログはオンライン上にあるため、ブログに置かれた成果物は多くの人の反応を受けて価値が高まる可能性がある。

「自分がお金に変換できない情報やアイデアは、溜め込むよりも無料放出することで(無形の)大きな利益を得られる」

 今となっては「何を当たり前のことを」と思うかもしれないが、十年前はネットの力(摩擦を考えない床ないしは弾性係数が1以上の壁)に多くのひとが理解していなかった。情報インフラの整備がされていなかったことも原因としてあるのだが。インフラの不整備はアドセンス収入について語るところにも現れている。

 二〇〇五年末時点で、日本で人気ブログを書くことで得られる収入は、アイフィリエートとアドセンスを組み合わせて、かなり頑張って月一〇万がいいところだろう。

 大手のまとめブログの収入は月百万円とも二百万円とも言われている。ネットだけで食べていける人はまだわずかだが、それでも一〇年前に比べたらすごい世の中になったものだ。

信用創造装置としてのブログ

 著者はブログを単なる自己研鑽または金儲けの場だけではなく、信用を創造する場としても見ていた。一〇年前にその考えに至るのは驚いたが、アドセンス収入が期待できない分こちらの考えが現実的になるのだろう。人の役に立つ記事、人を楽しませる記事、だれかにとってプラスに作用するものをアップしていけばブログ管理人の信用が増すはずだ。

 そのうち就職活動も履歴書の代わりにブログのアドレスを提示することが求められるかもしれない。「わたしはこれを作りましたよ、こんなことを考えましたよ」と表現しやすいからだ。ブログの読者が仕事先を紹介してくれることもあるかも。炎上記事ばかり書いてる場合ではない。
 

高速道路の終点でどう生きるか

 インターネットの普及によって学習の高速道路が整備された。しかし高速道路の先は大渋滞がおこっている。「高速道路」「大渋滞」は羽生善治の言葉だ。なかなか的を射た表現だ。最近は何を学ぶにおいても良い環境が整っている。プログラム言語を学びたい時はドットインストールの動画を見れば良いし、将棋や麻雀はネットに公開されている定石やオンライン対戦で腕を磨くことが出来る。入試対策も受験サプリの無料問題集でなんとかなるかもしれない。しかし高速道路の先には大渋滞が起こっている。既存の知をインストールした人たちが終点でぎっしり詰まっているのだ。

 今までの技術はコモディティ化、つまり価値がなくなっていく。高速道路の終点に来たときどうするか、若い人に考えてもらいたい。著者はそう書いている。

ぼくはどうするか

 一体僕はどうすればいいのか。何がしたいのか。本を読み終えて悩んでしまった。梅棹さんの言葉を借りれば、読書はただの知的消費活動だ。そこからプラスαを生み出さなくてはただの暇つぶしになってしまう。しかし僕は文章で何かを残すことに秀でている訳ではない。ほかの何かを作らなければいけない。

 こんなことはブログで何遍も言っていることなので、読者の中には「もう聞き飽きたよ」という人がいるかもしれない。まだSAも出ていないのに、高速道路の終点の心配をするのかどうかしている。早くキーを回して一速から走り出さなければいけない。

 TEDのマットカッツの30日間チャレンジという動画を知っているだろうか。彼はこの動画でひとつの習慣を三十日間毎日続けた経験をスピーチしている。三十日というのは何かをする上でちょうど良いスパンだ。というわけで僕も三十日ごとになにか成果物を残そうと思う。

さらなる「次の一〇年」を見据えて頑張ること

 本書が刊行されてから登場したものと言えば、スマートフォンとtwitter、facebookとLINEが挙げられる。スマホの登場によって人類の知的生産の道具はさらに進化した。だれもが表現者になれるし発信者になれる。またtwitterやfacebookそしてLINEによって情報をリアルタイムに取得し拡散することが可能になった。神経系がオンライン上にくまなく行き渡ったのだ。

 著者の次の一〇年はもう過ぎた。これからは「さらに次の一〇年」を考える必要がある。僕はこれからはハード面の革命が来ると思う。端末はウェアラブルになって眼鏡やアクセサリーのように身につけることができるようになる。今よりもオンラインとオフラインの境が薄くなるだろう。そして3Dプリンターの登場によって誰もが何でもつくれる時代がやってくる。特殊な技術は必要ではなくなる。

 しかしそんな世界が一足とびにやってくるはずはない。これからも旋盤は回り続けるだろうし、鋳型は生まれ続ける。そういうわけで僕の当面の目標はものづくりに対する技術を学ぶこと、そして毎月何かしらの成果物を出すこととした。

 社会人になったが自分の好きなことは続けていきたいと思う。