マトリョーシカ的日常

ワクワクばらまく明日のブログ。

【書評】答え合わせのない世界に僕は生きる/「風の歌を聴け」

完璧なサードブロガーなどといったものは存在しない。完璧なはてな村が存在しないようにね。

 村上春樹のデビュー作である風の歌を聴けを読んだ。女、酒、洋楽とタバコ。高濃度の村上成分がページのいたるところからにじみ出ており、ああそうそうこんなかんじだよなと雰囲気だけでも著者を感じ取ることが出来た。本を読む本では小説や物語は一つの文で書き表せるとしているが、この作品を一言で言うなら「女と出会い別れた男の夏」だろうか。何も進展しないし成長もしない。僕がここから実弾を得ることもできそうにない。しかしほのかな残り香がみみたぶに蓄積していく。

 答え合わせがしたいと時々思う。僕のあの選択は合っていたのか間違っていたのかはもちろん、彼あるいは彼女が発したあの言葉はなんの意味があったのか、そして皆はいまどこで何をしているのか。今はSNSで近況を簡単に知れるような時代にあるが、それでも知りようがないことが多くある。答えが分からないけど問題集のページはどんどん過ぎていき解答をとりあえず埋める作業が続く。

「ねぇ、私が死んで百年もたてば、誰も私の存在なんか覚えてないわね。」

 僕の声はだれかに届いているのか残っているのか。そう感じながら本を読み終えた。おわり。
 

風の歌を聴け (講談社文庫)

風の歌を聴け (講談社文庫)