マトリョーシカ的日常

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【書評/感想】世界を恐れるこどもたち/「コンイロッカー・ベイビーズ」

生きること

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コインロッカー・ベイビーズ(上) (講談社文庫)

コインロッカーに置き去りにされるも奇跡的に生還したキクとハシ。その後里親にもらわれた彼らは生きていく中で自分たちを取り巻いているエネルギーに立ち向かう。夢と現実が折り重なった空間で繰り広げられる描写は限りなく〜に近いなにかを感じる。


 曇りのままだと思っていた天気は帰る頃には雨がぱらつき始め、僕はゼミが長引いたことを憎んだ。細かい原稿の体裁をみなで直そうなどとそんな面倒なことをするんじゃない。あの二十分は一人の二十分ではなく三十人の重みがかかっているのだ。すなわち十時間。やれやれと自転車をこいでやっと駅につき本の続きを読む。コインロッカーと聞くとアヒルと鴨の〜を思い出すがあれとは全く別のテイストで僕はこちらの方が面白いかもなと思った。

 村上龍さんの作品は文脈よりイメージが先行する。透き通る青やよどんだ赤、ぎらぎらした白色にくさみやにがりや質感が脳を浸食していく。意味の分からない経を全身に浴びているようだ。そこから徐々にだれだれやかれかれや動詞や副詞がやってくる。両者は追いつかなくてもいいし追いついても良い。電車の上下に揺れるリズムにのって僕はそれらを消化する。

 閉ざされた炭坑と寂れた集合住宅が作中に出てくる。長崎の軍艦島のようなものだろうか。佐世保は以前行ったことがある。ハンバーガーとフェリーしか覚えていないけど。しかし坂道の描写はあまりなくキクとハシは海で魚とじゃれあったり集合住宅で秘密基地ごっこをしたりする。

 親に捨てられた二人はこの世界を普通とは異なる角度で見ている。そのためところどころおかしな色が写ったり匂いがする。二人にとって世界は何を考えているかわからない無機物であって急に猛烈なエネルギーの固まりで二人の存在を消し飛ばしかねないのだ。それゆれ幼い頃キクは常に長距離の移動を発作的に行ったり、ハシは糸くずやブロックを使って堅牢な箱庭をつくったりした。その後精神的な治療を受けて発作は収まったが内側にはまだ衝動がこもったままである。

おわり

 荷造りしながら読書。

 まったくはかどらない。