酔う小説
積み本が少なくなってきた。乙一さんの作品はあと二つ買っているがどちらも分厚いので今日読んで感想を書くのは難しいと思った。それらのとなりでまだカバーのかかっていた本を発見した。薄くてわりあい読みやすそうだ。
しかし手にとると全くページが進まない。小難しい文章で読み解くのに時間がかかるとか、つまらなすぎてページを手が動かない動かないとかそんなんじゃない。疲れる。読むのに非常に精神力を使うのだ。行間にMP吸収魔法でも仕込んであるのかというくらい。
単語と言葉の選び方運び方から連想されるイメージはどれもどす黒いピンクで、深い靄で覆われている。じっくり咀嚼すると胸の底がせりあがって吐きだしてしまそうになる。そんな吐き気と戦いながら読んでいく。
僕の部屋は酸っぱい匂いで満ちている。テーブルの上にはいつ切ったのか思い出せないパイナップルがあって、匂いはそこから出ていた。
切り口が黒ずんで完全に腐れ、皿にはドロドロとした汁が溜まっている。
以前へルタースケルターという映画を観たが、それよりも強いピンク感だった。
誰も成長しない小説
この話は主人公に目的があってそれが達成されたり、不意の出来事に巻き込まれたり、誰にでも分かる明確なテーマが設定されていない。長い長い詩を読んでいる感覚に近い。詩は靄としたものが多い。文章から連想されるイメージ、イメージを連想するイメージそのまたさらに向こう。何層もの構造があり読むたびに解釈が変わる。
二百ページに満たない文庫を何度と何度も読む。自分の中で化学反応が起こって新しい何かを得られるかもしれない。
おわりに
読んでいて気分が悪くなる本というのは初めてだった。それほど強烈なインパクトを持っているのだろうな。
うぅってなったら絵を見るように文字面を追おう。限りなく透明に近いブルーはそれに耐えうる文学作品だ。
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