マトリョーシカ的日常

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【書評/感想】雰囲気で言うとヨーロッパの水戸黄門/「ガリア戦記」

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ガリア戦記 (平凡社ライブラリー)


 読みやすい文章と面白い文章とはイコールでは結ばれない。読みにくい文章の中にも面白い文章は確かにあって、何度も何度もページを往復することがある。一見すると意味のない単語の羅列だったものが読み出していくと不思議なリズムに包まれてしまう文章や、脳を介さずに視覚から快感を直接得られるような文章もあったりする。ガリア戦記は上記のどれにも当てはまらないが読みづらく面白い作品であることに間違いはない。


 ガリア戦記は古代ローマの英雄ガイウス・ユリウス・カエサルがガリア地方(いまのドイツ、フランス、ベルギーあたり)にいる蛮族たちを懲らしめて各地を制圧していく様を自身がレポートとしてまとめたものである。シンプルで力強い語り口は自身を第三者視点で書いている違和感を除けばとても魅力的だ。さらに部族の名前や距離や兵数などの具体的な数値が細かく記載されており歴史的資料としても価値が高い。

 概要だけ述べると面白そうな作品であり実際面白いのだが、残念なことに非常に読みづらい。巻末に索引が設けられるほどいくつも部族が出てくるし横文字の人物名も多数出演。常にどこかと戦っているワンパターンな展開なので一度に読み切るのは難しい。「面白くって一晩で読破してしまいました!」とのたまう人もいるがそれは恐らく少数派だ。

読み進めるコツ

 そこで今回はガリア戦記を読み進めるコツを三つ披露しよう。一つ全部読まない、二つパターンを覚える、三つ重要箇所「六・一二節」を先に読む。なんだかセンター現代文の解き方のようになってしまったが以下から説明していこう。

 全部読まないというのは文字通りだ。冒頭からたくさんの部族が出てきて頭の中がこんがらがってしまうので、重要な箇所だけ読めばいい。大事なのは蛮族がカエサルを挑発する→カエサルやっつける→蛮族降参というパターンだ。場所や人が変わるが基本的にこの形におさまる。次に六・一二節の一部を引用して紹介しよう。

 カエサルがガッリアに来たとき、一方の派閥を仕切っていたのはハエドゥイー族で、もう一方を仕切っていたのはセークァニー族だった。
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 セークァニー族は(中略)ゲルマーニー人、とりわけアリオウィストゥスにすり寄り、多大な出費と約束を重ねて味方に引き込むと、何度かの戦勝でハエドゥイー族の名家の者を皆殺しにし、大きな権力を手にした。

 もともとはハエドゥイー族とセークァニー族の二強だったのだが、カエサルが来てセークァニー族は劣勢になり彼らの代わりにレーミー族が台頭していった、という流れだ。そしてこのあとはゲルマーニー人とガッリア人の文化や風習について書かれている。いままでの戦一辺倒とはちょっと雰囲気が変わり楽しんで読める。

ここが面白い!

 この作品で印象的だったのはローマ兵だ。彼らは軍人であると同時に工兵でありつくってわくわくを繰り返しながらガッリア人に立ち向かう。こんなシーンがあった。

攻城用のやぐらを組み立てているローマ兵

ガッリア人「えーあいつ何作ってんの、あんなでかいものこっちまで持って来れる訳ないじゃん」

やぐらが動き徐々に城壁に近づく。ガッリア人すぐさま講和をもちかける。

ガッリア人「ローマ人は神々の力を借りて戦争をしているに違いない」


 ローマ兵の工作教室はシステマチックで効率化されていてより速くたくさん作れるようになっている。大きな川に橋を架けたり、ガッリアの地を進軍とともに開拓し道路を作っていくのには驚いた。カエサルは詳細な建設法を本書で述べていて読んでいてイメージが浮かんでくる。

おわりに

 その他思ったこと。

  • カエサルフィルターの影響かもしれないがガッリア人は流されやすく我慢が出来ない人間に描かれている。そしてやると決めたら家や土地を焼き払ってしまう。セルフ背水の陣を敷きたがる人々だ。
  • 読んでみたけどよく分からなかったら「ラビエヌスさんまじかっけえ」とだけ言っておけばいい。
  • 検索したらこんな曲があった。かっこいい。


【吹奏楽】ガリア戦記_III_勝利___のようだが - YouTube


 こちらからは以上です。