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【書評】あと三回読み直したいSF小説/一九八四年

秋の夜長は読書とブログ

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一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)


 SF小説の傑作であるジョージ・オーウェルの一九八四年を読んだ。

 舞台は近未来の全体主義的な社会。真理局に勤める主人公スミスは歴史の改ざんが仕事だった。しかし、自分の行動や思考を監視されている社会に対して疑問を抱きはじめる。接触して来た女性、ジュリアとともに反社会的組織ブラザー同盟に入会することを目指す。しかし……。

 読み終えたが、これはきっとストーリーを楽しむというより、物語の背景にある設定や作者の考え方を味わうものな気がする。

二重思考、ニュースピーク、そして思考犯罪

 この小説のキーワードはいくつかあるが、僕はその中でも上の三つを挙げる。

 二重思考とは相反する二つの考え、コントロールし、両者とも受け入れることである。

 心が<二重思考>の迷宮へとさまよいこんでいく。知っていて、かつ知らないでいること-入念に組み立てられた嘘を告げながら、どこまでも真実であると認めること–
(中略)
 <二重思考>という用語を理解するのにさえ、<二重思考>が必要だった。

 要するにに自分の都合の良いように考えることだと僕は感じた。これを使えば自分の立ち位置を無限に変えることができるから、どんな議論でも勝てる。

 ニュースピークは作中に出てくる言語だ。以前の英語(オールドスピーク)から語彙を削り取り、国を支配している党の思考様式以外の思考法を不可能にすることを目標とする。例えば全ての語をいかなる品詞にも適用可能にする。いまの若者言葉をさらに広げたようなものか。「〜〜る」「〜〜的な」など。
 また、接頭語に非、倍、倍超をつけることでさらに語彙を少なくする。暖かいは非寒いとなるし、非常に寒いは倍寒い、超倍寒いとなる。おこ、げきおこ、げきおこぷんぷんまる。と似ているかもしれない。

 この世界では党に対抗する行動は取り締まれる。そしてさらに考えただけでも思考警察によって逮捕される。逮捕されるとその人物の記録は全て抹消される。いなかったものとみなされるのだ。球磨川の能力みたいだ。

"あの本"による整理

 作中後半に"あの本"の引用が長く載せられている。これは党の支配者の<ビッグブラザー>に対抗する存在とされている<ゴールドスタイン>が書いたとされる本である。これを読むことで今までの世界のなりたちや歴史が整理される。

 しかし僕はこれがゴールドスタインが書いたものなのか疑ってしまう。なにしろ本の第一章が「無知は力なり」、三章が「 戦争は平和なり」なのだ。これは党のスローガン、

戦争は平和なり
自由は隷従なり
無知は力なり

の一部である。

いや、もしかしたらゴールドスタインは党が作り出した架空の存在で、ブラザー同盟なんてものも存在しないのかもしれない。

イングソックの終焉

 この話の巻末はニュースピークに対する紹介、考察で結ばれている。解説にも記載があるが、ここの文中は全て過去形であり、語法はオールドスピークである。よってこの文章はイングソック(イギリス社会主義、党の名前)の監視下に置かれていない状況で書かれたものと判断でき、イングソックがなくなった未来を予見できる。

 だとするとイングソックはいつ、どのように終わったのだろうか。僕は全く予想できない。社会主義国家の終焉がどのようなものだったかを知っていれば分かるのだろうか。イングソックの思考警察はすごい。人々の思考を読み取り、異端者をすぐに摘み取る。

 宇宙人が襲撃してくればこの世界は終わるのかもしれない。

はやいけどおわり

 また書き加える予定ですが、今日はここまで。ひとまずの更新です。


一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)