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【書評】四元素説から核反応まで。SF作家アシモフによる初心者向けざっくり化学史/「化学の歴史」

これ以上まとまった化学史はない!

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化学の歴史 (ちくま学芸文庫)

 大学を卒業する前に一通りの教養を身につけておこうと思い、最近は様々な分野の学術書を読んでいる。といっても、難しい内容のものではなく、若者でも読みやすくなおかつざっくり体系的に説明してくれるものを選んでいる。世界史、哲学、数学、ときたのでこんどは化学を勉強しよう。そう思い手に取ったのがこれ。化学の歴史。1400円もしたが、よくある自己啓発ハードカバーライフハックどやどや本よりはずっと密度が高かった。

 本書は作家であり化学者であるアイザック・アシモフが人類の化学の歩みをまとめあげたものだ。もちろん、和訳されたものなので安心してほしい。この本のなにがすごいかというと、その圧倒的な情報量だ。いつだれが何を発見し、それを受けてどうなったということがずらりと書かれている。しかも時系列順に整理されており頭にトンと入ってくる。極めつけはめちゃくちゃ面白いということだ。「物質は何でできているのか」という謎を長い時間をかけて少しずつ解き明かしていく様は推理小説のようだし、人類の成長という面から考えればRPGのようでもある。ページを読み進めるごとに、興奮で背骨がぞわぞわっ!としてくる。

 いくつか内容を紹介しよう。

化学は哲学だった。

 はじめ、化学は哲学だった。昔は学問が今よりも分化されてなかったと思うからそれは当然のことだが、「この物質は何か」と考えることは「物とは何か」「在るとは何か」と密接に繋がっている。紀元前四百年から三百年頃、ギリシアの哲学者アリストテレスは物体の根源はそれまで唱えられていた元素説を踏まえ、物体を構成する元素は四つだ説明した。火、水、土、空気だ。また、同じく哲学者のデモクリトスは、物体を分割していくとこれ以上分割できない究極的な小粒子「原子(アトモス)」があると言った。

 これが紀元前のころの話なので、西暦1000年頃には化学は大分進歩しているのではと読み進めていったのだがなんとそうではなかった。錬金術が流行り出したのだ。自在に金を生み出し富を手に入れたいという欲望は強烈なものだった。

まるで元素のバーゲンセールだな。

 一番面白かった所は元素が次々に発見されるところだ。電気分解などの新しい技術により化合物からとり出される元素の種類が増えていった。ベジータの言葉を借りるなら元素のバーゲンセールである。それだけ見つかるとどうにかして体系化しようという動きが高まってくる。今日の周期表を作ったメンデレーエフは有名人だが、それ以前にも多くの人がこの問題に取り組んだ。
 本書の162ページにはニューランズが作成した周期表が載っている。七×八マス表に元素記号がびっちり埋まっており、「あぁ、もう!ここにあれが入るんだよ!」と言いたくなる。しかし、メンデレーエフの周期表に空白を入れるという発想の方が奇抜なのだ。仕方がない。

おわりに

 
 高校のころは化学と言えば暗記科目で、ひたすら何かの単語を覚えていた記憶がある。でもこうやって化学の歴史を一通り学ぶと、流れが分かってより理解が深まる。しかも楽しい。

 楽しいのは、今の勉強が強いられたものではないというのも原因かもしれないけれど。

 まだ紹介したいところはたくさんある。ベンゼン環の構造の発見、立体的な分子構造、物理学との融合などなど。続きはぜひ自分で手に取って読んでみてほしい。

 本日はここまで。


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