マトリョーシカ的日常

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【書評】エジプトからはじまる幾何学の歴史を知る/「幾何の発想」

エジプトからはじまる幾何の歴史

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幾何の発想 (講談社学術文庫)

 ナイル河の氾濫を予測、制御するために生まれた幾何学の歴史をピタゴラスなどの有名人の功績を例にあげて説明している本。「数字の羅列を見るだけでめまいがしてくるわ!」という、数学ノイローゼの人ははてなユーザーの中にはいないと思うが、そういった数学が嫌いな人でもその根源を知ればちょっとは好きになるかも。

 本の流れとしては、三角形の合同の証明を行った数学の父ターレスから、彼の教え子ピタゴラスの功績を紹介。さらにアテネの家庭教師ソフィスト達を悩ませたソフィストの三大難問、ユークリッドアルキメデス、アポロニュウスと続いている。

 挿入されている数学表現は中学程度のものなので難しくはない。ノートに図形を描いてもいいし、面倒でとばしても十分読み応えのある内容になっている。

親和数と博士の愛した数式

 ピタゴラスはでかい教団を作ってそこでみなに数学をやらせた。彼らが発見した法則は全てピタゴラスのものとなったので、ピタゴラス発の数学的記述はかなり多い。この本でも多くの記述がされているが、その中で僕の目に止まったのは親和数という数字だった。

 ピタゴラスはまた
⑥ 親和数
 というものを考えている。これは
284=1+2+4+5+10+11+20+22+44+55+110
220=1+2+4+71+142
 のように、二つの数字があって、一方は他方のそれ自身を除くすべての約数の和になっているような数のことである。

 どこかで見たような表現だと思ったら、博士の愛した数式で博士が友愛数と言っていたものと同じだと気づいた。主人公の誕生日2/20と博士の論文の番号284を比べ、こんな数の組み合わせはめったにない、と主人公と博士のつながりの深さを熱く語っていたなぁ。


 二つの数字が親和数だから何の役に立つのと聞かれると返事に困ってしまう。ピタゴラスは「あ、これ面白いかもね」と軽い気持ちで書き留めたのかもしれないのに。ただ、まっすぐな好奇心は強い。強いよ、ほんと。

「点とはなにか」から定義したユークリッド

 紀元前三百年頃、エジプトで活躍したユークリッドは「原本(原論)」というベストセラーを執筆した。全十三巻からなるこの書物は今日の幾何学の基礎を形づくった。なにしろ点とはなにかから定義されているのだ。僕らが使っている数学の教科書に書いてある命題がずらりと並んでいる。第一巻だけでも命題が四十八個ある。

まず、ユークリッドがのべた定義を以下にあげてみよう(いずれも直訳である)。
1:点とは、部分をもたないものである。
2:線とは、幅をもたない長さである。
3:線の端は点である。
4:直線とは、その上に点が平等にのっている線である。
5:面とは、長さと幅だけをもつものである。
6:面の端は線である。

 定義はさらに続いていくが、長いので省略する。当たり前のことが書かれているが、当たり前のことを文章に書き下すのは大変なことだ。ユークリッドは数学的能力も高かったのだろうが、「数学という学問を後世に残したい」という強い意志も持っていたのだろう。そうでなければ十三巻も書けない。

おわりに


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 図を書くのが好きな僕にとって、この本はとても楽しく読めるものだった。挿入されている図形をノートにかきうつしては悦に入っていたりした。ちょっと気持ちが悪い。


 本日はここまで。