作りたい衝動
Made by Hand ―ポンコツDIYで自分を取り戻す (Make: Japan Books)
Arduino作品でおなじみの雑誌「Make」の編集長である、Mark Frauenfelderが自身のDIY体験を書き綴った本。ニワトリ小屋の建築、家庭菜園づくり、エスプレッソマシーンの改造、養蜂……。読んでいるとワクワクしてきて、「自分も何か作ってみたい!」と思うこと請け合い。
DIYは失敗してなんぼ!
DIYはDo It Yourselfの略で専門家の手を借りず、何でも自分の手で作ってみる活動のこと。日曜大工で本棚を作ったり、電子工作をしたり、ジャムを製造してみるのも全部入る。僕は雑誌やテレビでログハウスを手作りしてそこに住んでいる人を見ると、「楽しそうだけどちょっと難しそう」と尻込みしてしまっていた。失敗したらどうしよう、無理かな諦めようかな。
諦めんなよお前!どうして諦めるんだそこで!
別に失敗してもいいみたい。本来DIYは失敗するのが当たり前で、そこから試行錯誤してある程度使えるモノにするのが楽しいのだとか。
私が、ミスター・ジャロピーやその他のDIY愛好家たちから学んだのは、失敗は避けられないことであり、そればかりか、学んだり技術を磨いたりするうえで失敗は必要であるということだった。失敗は、自分が行動的で好奇心があるという証拠だ。事実、最近の脳研究の分野でも、失敗こそが最良の学習法だと言われている。
失敗は恥ずかしいことではない。寸法通りに木を切断できなくても、配線を間違えてショートさせても、生卵を床に落としても死ぬ訳ではないのだ。これはDIYだけではなくどんなことにも言えると思う。
ニワトリから得られること
昔、僕の実家はニワトリを飼っていた。茶色い羽で立派な赤いとさかを持ったやつを七か八羽ほど。彼らは庭のあちこちを散策しながら虫や草を食べ、卵を生んでくれた。生みたての卵はほんのり暖かかった。味は覚えていないが、飼っていた当時はけっこうな量の卵を食べていた気がする。
著者は隣人がニワトリを飼っているのを見て、よし、自分もと思ったらしい。ガラクタが大量に詰まっている物置を整理して水をかけて掃除をし、古い屋根をはぎトタン屋根をしき、新しく戸をつけた。ヒヨコはネット通販で取り寄せた。
ニワトリは、ほんとうにいろいろな形で私たちの生活に貢献してくれた。とくに、そもそもそれが第一の目的で飼い始めたにも関わらず、ニワトリが卵を産み始めたときは大いに驚いた。
近頃の食品はほとんどがスーパー等でパッケージされて陳列している。生の命を直接いただく体験というのは少なくなってきた。ニワトリを飼い、卵を食べるというのはそういう意味でも良い経験なのかもしれない。
DIYと家族
この本は著者が作ったものをただ紹介しているだけではない。子供と遊んだり、妻とケンカするシーンが入っている。家族とコミュニケーションをとっていく過程で、彼が反省したり悩んだりする。ひとりの男の生き方を読み取ることができる本だ。
以前はそうでもなかったが、最近は田舎の暮らしに憧れている。家の前に広い庭があり、子供とキャッチボールしたりバーベキューしたりできる。ニワトリ小屋やうさぎ小屋をつくったり魚を釣ったりさぞ楽しいだろうな。
日曜大工レベルでも何かをつくる技術を会得できたら田舎暮らしも困らない気がする。将来はどうなるかわからないけど自分の好きなことをして田舎でゆっくり過ごしたいなと思った。