マトリョーシカ的日常

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【書評】かもすぞ! 菌を制するものは食を制す/「発酵食品礼讃」

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 発酵食品礼讃 (文春新書 (076))


 もやしもんという漫画を知っているだろうか。菌やウィルスが見える主人公が、農学部でのキャンパスライフを過ごすまったり漫画だ。ただのほのぼの系かと思いきや、身近な食材に発生するカビや菌についてや、それらの発酵のプロセスを解説していたりするので学べることも多い。

 発酵食品礼讃は世界中の発酵食材をとりあげて、人が身につけた「発酵」という知恵についておもしろおかしく記述されている。文系の人でもぜひ読んでみてほしい。

肛門から体液を吸う/へんてこな発酵食品

 またもやしもんの話になるが、アニメの第一話で主人公は大学の構内で、地面からおびただしい菌が発生しているのを目撃する。実はそれ、変人の教授が「キビヤック」という発酵食品を製造していた過程だったようで、その教授が地面を掘り返し、中の食材を食べるシーンがある。

 (キビヤックとは) 巨大なアザラシの腹の中に何十羽という海鳥を詰め込み、そのアザラシを土に埋めて発酵させるという、誠にダイナミックな漬け物なのである。

 いったいどこでそんな発想が生まれたのか。食べ方もまたダイナミックで、発酵した海鳥の肛門から体液を吸い出して食すらしい。

 極寒地方で暮らす人は野菜などの食物繊維が不足しがちなので、動物の血液から繊維を摂取するらしい。発酵食品の優れたところは栄養がばりばり満点というところだ。これでイヌイットの人も生きていける。

くせえよ、くさや

 くさやという干物がある。そのまんまで、とびきりくさい干物である。当時、塩が不足している状況で、海水を使い干物をつくる知恵が生まれた。何千回も同じ海水に漬けるうちに魚のくさみがうつり非常に強烈な匂いを発生する。しかしうまみ成分も同じように増えるので、くさいけどうまい干物ができあがる。

 先日、ほこたてというテレビ番組の企画で「とんでもなく臭い食べ物VSどんな匂いもとる脱臭器」の特集がされていた。食べ物にはこのくさやが使われ、消臭器にはオーニット社の剛腕が使われた。対決はくさやが勝利した。オーニットの社員さんが言うにはプレハブ小屋の内部でくさやを焼いたら匂いが外に漏れてしまい、消臭器でも消しきれなかったのだとか。どれだけ凄まじい匂いなんだろう。すごい。

ほこ×たて フジテレビ系人気番組で放映 | オーニット - オゾンを通じて環境改善に貢献します


おわりに

 発酵って不思議だ。ほうっておいたものをまた食べるなんて勇気ある行動だと思う。地面に埋めたりつぼに入れたり、いったいどこで思いついたのか。人間の食べ物に対する執着は他の生物よりも強い。食物連鎖の頂点にいる理由は、そこなのかもしれない。