いきすぎた努力のせいで彼の夢は断たれた
甲子園を目指す為に名門校を受験したら、名前の似ていた超エリート進学校だった。
この小説の筋は以上だ。ばからしい。本当にこんなことあるのか?報徳学園を受けようと思って、合格して確認したら灘だった。というレベルだ。3年間野球漬けで、引退した3年の夏休みから受験勉強を始めてた主人公は塾にも通わず、友達の彼女に教えてもらい、そんな超進学校に合格してしまったのだ。
まさにチート。本人が一番驚いているけど。
「鎌倉にあるのは海鵬じゃなくて、海應!なんで?なんで誰も気付かなかったんだよ?」
沢登はほとんど怯えているようだった。「なんで誰も止めなかったんだ?」
「ていうより、なんで受かったの?」生駒はほとんど怒っているようだった。
「え?」俺ひとりだけがことの重大さをよく分かっていない。
野球小説の主人公はクールだ
野球が題材の小説では、主人公は熱血漢ではなく、冷静でカッコイイ奴だ。こんなイメージを持っているのは、きっとあさのあつこさんの「バッテリー」の影響だろう。原田巧も才能あふれるクールな奴だった。いや、もしかしたら中高生はだれしも中二病を患っているのか?誰にも邪魔されたくない。クールな俺最強…。
読む側からすると煩わしく思えるけど、10代男子の心情を大人が描写できるっていうのはすごいことだな。
「たかが野球で、ずいぶん調子くれる奴だな」
俺の白眼視さえ受け止められない安達は、彼自身が自覚している弱者だ。その言葉にまったく腹は立たなかった。安達の悪態などまったく心に響かない。
1+1は2にしかならない。
なんとなくではあるが、この物語の展開が読めてきた。超進学校×野球から導かれる答えはずばり頭脳プレー。血のにじむ練習風景などそこには存在せず、必要な練習を必要な量だけこなす。甲子園出場への道のりの最適化が描かれるはずだ。それに必要なのは優秀なブレーン、コーチの存在である。
終盤になって彼は登場した。
「おや、まだ分かりませんか?チームプレーなどは幻想なのです。野球は九人でやるのではなく、ひとりでやるのです。チームに九人いるのではなく、プレイする人が九人いるのです」
(中略)
…簡単な足し算なのですよ。一足す一は二なのです。それ以上を求めても得られるものはありません。分かりますか?」
セバスチャンは顧問手当という金のために野球部の顧問になった素晴らしい人物だ。彼の行動にはぶれがない。全ては金のためだ。
でもそのうちチームに情がうつったり…はしないだろうな。
チート主人公型作品の魅力
この小説の一番の魅力は「主人公が強すぎるので安心して読める」の一点に尽きるだろう。確かに失敗や挫折があった方が人間味が出てよりリアルな作品に仕上がるかもしれない。でも僕はそんなものは求めていない。爽快感、全能感が欲しいのだ。
ワンパンマンというWEB漫画を知っているだろうか。強すぎてワンパン(パンチ一発)でどんな敵も倒してしまう主人公が出てくる漫画だ。絶対勝つって分かっているから、相手が超人アピールするたびに笑えてくるのである。「そんなことしても負けるから。無理だから(笑)」と。
ワンパンマン
登下校の電車内で読み進めていたら、一日で全部読んでしまった。こんな小説は久しぶりかも。
おすすめです。