インドラがいじけていなくなったせいで、世界は荒廃しヤバい状況になった。神々はどうしようもなくなって、とりあえず良いとこ出のナフシャを王にまつりあげることにした。「いやいや、私では力不足ですよ」とナフシャは断ったが、神々は引き下がる。「力不足と言うならば、あなたに素晴らしいパワーをさずけましょうぞ。えい!」という感じで、ナフシャは特殊能力を得た。自分の視界に入った神々や悪魔のストレッチパワーを吸収してより強くなれるのだ。
わりといい塩梅で強くなったナフシャだが、力を持ちすぎると傲慢になるのは人の常である。彼も多分に漏れずえらそうな立ち回りをし、インドラの妻であったシャチーを自分のものにしようとした。やめてください、とシャチーはプリハスパティのもとへ避難した。彼女に会えなくなったシャチーは「インドラも聖仙の妻だったアリヤハーに手を出したではないか、彼はわるいやつさ」と嘆いた。
さて、失踪したインドラの面倒をみなければいけない。神々はいつものように便利屋ヴィシュヌ神のもとへ訪れた。そして、どうすればインドラのバラモン殺しの罪を浄化することができるのかを訊ねた。「仕方がない、私を供養する祭りを開きなさい。私が彼を清めてやろう。ナフシャのほうはそのうち自滅するからほおっておけ」それを聞くと、神々はインドラを探し出し祭りを開いた。インドラは罪を清められ自分と言うものをとりもどした。
ところが、インドラはナフシャが神々のあたえた恩寵により絶大な力を持っているのを見て、再び失踪して、あらゆる生類から身を隠してしまった。
シャチーが嘆き悲しんでいると、シュッとした女神がやってきた。「あなたは?」「私はウパシュルティ。ついてきな、インドラに会わせてやるよ」そう言ってともにヒマーラヤと海を越えてある池にやってきた。生えている蓮の茎を切ると、その繊維の中に彼を見つけた。
シャチーはインドラに再び神々の王となるように説得した。インドラは了承した。しかし、今のままではナフシャの力に対抗できない。インドラは腹案を実行することにした。ナフシャに聖仙がかつぐ神輿に乗ってもらうのである。比喩ではなく、実際に乗るのだ。シャチーは早速ナフシャのもとへ戻り、その前代未聞の乗り物について話した。ナフシャはこの案に飛びつき、シャチーを帰らせた後すぐさま実行した。
わっしょい神輿に乗ったナフシャはご機嫌だった。わっしょい担ぎ手の聖仙たちはやはり苦しかったので、乗り手に質問した。
「犠牲の牛に水を灌ぐ際にヴェーダに説かれたマントラ(聖句)は権威があるかどうか?」
慢心していたナフシャは「ない」と答えた。すると、聖仙たちは「あなたは法をしらない。だめだだめだ」と反論した。口喧嘩しているとナフシャうっかり足でアガスティヤさんの頭に触れた。そのため彼はストレッチパワーを失ってしまい幸運に見捨てられた。ポコロコもびっくりである。こうして、ナフシャは神々の王位から転落し、一万年の間大蛇の姿でさまようのだった。
インド神話はこれで一区切り付けます。次は何を書こうかな。
- 作者: 上村勝彦
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2003/01
- メディア: 文庫
- 購入: 6人 クリック: 22回
- この商品を含むブログ (15件) を見る