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マトリョーシカ的日常

ワクワクばらまく明日のブログ。

なんかもうよく分からなくなって失踪したインド神話

 結局、干上がった海は天上のガンガー(ガンジス川)を地上に導き満たされた。

 話は変わるが、トゥバシュトリはインドラを殺すためにヴィシュヴァルーパという名の、三面をもつ息子を造った。三面のうちひとつはヴェーダ聖典を学び、ひとつは酒を飲み、ひとつは世界を呑み込むかのようだった。ヴィシュヴァルーパは激しい苦行を行ったので、インドラは「こいつはほんとうに三界を呑むじゃねぇか……!?」と恐れた。インド神話の世界では苦行を行えば行うほど素晴らしいパワーがもらえるらしい。彼らは千年単位で平気で山に籠る。そういうわけで恐れたインドラは、天女を使ってヴィシュヴァルーパを誘惑しようとしたのだが、彼の鉄の意志によってはねのけられた。

 「こうなったら俺自身が殺るしかないな」おんどりゃー、と彼はお気に入りのヴァジュラを放った。ヒットしたヴィシュバルーパは地に伏したが、それでもなお光を放っていた。焦ったインドラは付近にいたきこりに、持っている斧でヴィシュヴァルーパの首を飛ばすように言った。バラモン殺しをすることにきこりは躊躇した。「だいじょうぶなんですか、こんなことやって。あんた何者?」

「私は神々の王インドラである。ためらうことなく、私の言う通りにせよ。」
「聖仙(トゥヴァシュトリ)の息子を殺すなどという、ひどい行いをして恥じないのですか? バラモン殺しを恐れないのですか?」
「私は浄めのために、後で難行の務め(ダルマ)を行う。この大威力を有する敵をヴァジュラで殺したのだが、今でも心配で、彼を恐れているのだ。(後略)」

 傍若無人とはまさにこのことである。きこりは斧でヴィシュヴァルーパの頭を切り落とした。三つの頭から山鳥、鷓鴣、雀がそれぞれ飛び立った。インドラは切り落とされた首を持ち、喜んで帰っていった。

 息子が殺されたことをしたトゥヴァシュトリは遺憾の意を表明し、恐ろしいヴリトラを造り出した。「インドラを殺せ」と命令した。ヴリトラはトゥヴァシュトリの苦行の力によってパワーアップ!していたので、インドラは簡単にやっつけることができなかった。やむなく退却し、ほかの神々といっしょにヴィシュヌ神に助けを求めた。ヴィシュヌ神はこう言った。

 「インドラはヴリトラと和平を結び、それからなんとかして殺せ」

 早速神々はヴリトラと和平を結んだ。ヴリトラは条件を出した。

「乾いたもの、湿ったもの、岩や木によっても、(通常)兵器によっても、ヴァジュラによっても、昼も夜も、インドラと神々は私を殺してはならない。」

 神々は了承した。さて、インドラはヴリトラを殺す方法を考えていた。あるとき、明け方の海岸でヴリトラがいるの見た。「今は明け方で昼でも夜でもないから彼を殺すことが出来るぞ」そう意気込むと、海上でたくさんの泡がもこもこ現れた。これは乾いても湿ってもいないから大丈夫だ、と考えたインドラは泡を持ち、ヴリトラめがけて投げた。ヴリトラは死んだ。

 ヴリトラが死に世界に平和が訪れたが、インドラはバラモン殺しに大きな罪の意識を感じていた。彼は諸世界の果てまで行き、なんかもうよくわからなくなって失踪した。

インド神話―マハーバーラタの神々 (ちくま学芸文庫)

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