マトリョーシカ的日常

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日常生活には役に立たない神々の話/「インド神話 マハーバーラタの神々」

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 しばらくはインド神話について語る。

 『リグ・ヴェーダ』が誕生したのは紀元前一二〇〇年前後だと言われている。ヴェーダとは知る(veda)という意味が語源であり、バラモン教の聖典の総称となった。それは作られたものではなく、永遠の過去から存在していた。超越的な状態に入っている詩人が、啓示を受けて表象したのである。ちょうど『ザップ・ガン』に登場するラーズやリロのように。

 『リグ・ヴェーダ』の宗教は多神教である。神々はデーヴァ、悪魔はアスラ(阿修羅)と呼ばれる。しかしアスラは元々は悪魔ではなく、デーヴァとは異なる側面を持つそれを指していた。重要な神はなんといってもインドラ(帝釈天)であろう。屈強なアーリヤ戦士をモチーフに描かれ、工巧神トゥヴァシュトリの作った武器ヴァジュラを手にしている。その武器を使って悪流ヴリトラを打ち倒すイベントは単発ではなく、周期的に行われる行事である。最高神であったインドラは時代を経るに連れて弱体化する。苦行する修行者を恐れて、苦行を妨害するシーンも見受けられる。インド神話のここらへんの価値観は、テスト期間中の学生に通づるものがある。

 インドラに次いで重要な神はヴァルナである。ヴァルナは宇宙の秩序と道理を支配する司法の神である。天則リタの守護者であり、リタによる定期的な惑星の運行を守る。絶対不動のリタは人間も神々も破ってはならない道であり、真実である。ヴァルナはリタによって厳密に事が運ばれているかを監視する。しかし彼(?)もインドラと同様に時の流れによって弱体化し、他の神に地位を奪われてしまう。

 英語のignitionの語源はラテン語のignisだと言うが、それは火の神アグニの語源でもある。アグニは天には太陽として輝き、空中は稲妻、地上では祭火として燃え上がる。そしてそれは目に見えるものだけではなく、我々人間の思想や感情の中にも存在する。万人に共通する火は普遍火と呼ばれる。アグニはいたるところに存するようだ。

 今日はシヴァに関する神話をひとつ紹介して終わりたい。アスラが持っていた三つの都市をシヴァがぶっこわす話である。シヴァはリグ・ヴェーダの中ではルドラとも呼ばれ、もとはモンスーンの神格化として登場する。あるとき神々に破れたアスラらはプラフマー神にお願いして、それぞれが金・銀・鉄でできた三つの都市を建ててもらう。喜んだアスラ三人集は暴君ネロもびっくりの統治を行った。みかねたプラフマーはシヴァにその都市を矢で粉砕するよう要請する。了承したシヴァは他の神々からエネルギーや武器を分けてもらい、三都に向った。シヴァが都市に向うと、それらは一つに合体する。しかし、そんなことはお構いなしに彼は一矢で貫き、悪魔もろとも三都を焼きつくした。めでたしめでたし。

 本はアサハラさんから頂いた。ありがとうございます。
 

インド神話―マハーバーラタの神々 (ちくま学芸文庫)

インド神話―マハーバーラタの神々 (ちくま学芸文庫)