円周率にはまっている。別に小数点百位まで覚えるとかそういうものではなく、ただ単に円周率の歴史が気になって本を読んでいただけだ。『πの話』の中身は、人類の円周率の発見と分析の歴史である。およそ3の時代からはじまり、幾何的、物理的な計算、そして数理的演算とつらなり、今日のスーパーコンピューターの計算競争に続いている。面白い。
大昔から円周率がおよそ3であることは分かっていた。古代バビロニア人はπ≒3+1/8としていたし、エジプト人はπ≒4×(8/9)^2と考えていた。ひもと棒切れがあればざっくばらんに計算ができる。本書では小学生の手を借りて円周率を測っている。古代人と同じようにひもや砂を使ったり、モンテカルロ法みたいなことをしていた。モンテカルロ法というのは乱数を使った数値計算のことで、今回の場合は長さ1の正方形の箱の底に、それに内接する円を描き、箱に豆を入れて計算している。全体の豆と円の中に入っている豆の数の比から円周率を求めることが出来る。
人間というのは欲深い生き物で、先が見えそうになると、「もうちょっとやってみようかな」と思うようになる。円周率は先の方法では小数点第一位までの精度くらいしか出ないため、幾何的な方法が試されるようになった。多角形を用いるのである。
半径1の円に内接、外接する二つの六角形を考える。円の周の長さは内接する六角形の全周(l')と、外接する六角形の全周(l'')の間に位置するはずである。円の周囲をlとおくと、
という不等式が得られる。ここで、l=2πであり、
より
が得られる。
アルキメデスは正96角形を用いて円周率の近似値を求めた。
これによって、現在でもおなじみの3.14が出現した。この方法は他の数学者にも使われており、例えば日本の算術士、関孝和(天地明察に出てた人)は正131,072角形を使って求めたそうな。頑張り過ぎである。求まった答えは「3.14159 26532 88992 7759弱」。だいたいあってる。
十七世紀になるとデカルトが登場し、座標を考案する。これによって代数学と幾何学が結ばれ、円へのアプローチはさらに広がった。曲線の方程式を立てて、その面積を求めることが可能になった。これは区分求積法という手法で、面積を細かい帯に分けてそれらの総和を求めるというものだ。
そしてこんなへんてこな公式が生まれた。左のグラフはの方程式と、それによって囲まれる面積である。その面積は右のグラフの弧の長さと等しい。
左のグラフの面積θは積分記号を用いると以下のように表せる。
今、c=1の場合を考えると、弧は直角をちょうど二等分するので、θ=π/4となる。
ここから、ライプニッツの公式が出てくる。
これによって円周率は無限回の四則演算によって近似値まで求めることが可能になった。あとは必要なのは根気と正確さであり、私たちは計算を機械へと託した。本当はもう少し収束が早い式があるが。
つづくかもしれないし、つづかないかもしれない。
- 作者: 野崎昭弘
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2011/02/17
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