前から読みたかった本だった。100円で古本屋に並んでいるのを見つけて、思わず買ってしまった。この本はE.H.カーがケンブリッジ大学で行った講演を和訳したもので、歴史に関する思想を深める事が出来る。第一章で歴史と歴史家との関係を説き、二章で歴史家は個人でありその時代の社会に影響されていることを示す。三章では歴史が科学と同種である事を述べ、次の四章で科学的に歴史を考察する。五章からは現代における歴史について著者が説明している。
僕にとって、歴史は学校の教科書のものでしかなかった。いついつに何が起こった、これはこのような原因があり、後にああなった。年号と人物名と、わずかな理由を覚えるだけの退屈な勉強だった。しかし、本によると歴史は事実のかたまりではないらしい。
著者は歴史は解釈だという。この世のすべての事象を歴史家が採集し、相応の理由をづけて配列を組み替える。歴史的な大事件は特定のそれではなく、編集者によって異なる。そして、彼らを形づくるのはその時代の社会だ。歴史とは事実と思想の相互作用であり対話である。それゆえ、社会もしくは個人のどちらかのみの観点で絶対的な価値観を構成するのは無理な事だ。
社会から切り離され、歴史から切り離された抽象的な規準や価値というのは、抽象的な個人と全く同様の幻想であります。真面目な歴史家というのは、すべての価値の歴史的被制約性を認める人のことで、自分の価値に超歴史的客観性を要求する人のことではありません。私たちの抱いている信仰にしろ、私たちが立てる判断の規準にしろ、歴史の一部分なのであって、歴史的に研究されねばならぬという点では人間行動の他のすべての側面と全く変わらないのです。
以前、サードブロガーの歴史を記事にまとめた。なるべく僕自身の思想が残らないように、自分の考えを書く事を極力避け、引用を中心に展開していった。それでも何らかの方向性がそこには残る。
サードブロガーの変遷とそれに関連する出来事のまとめ 第一部(2013年10月~12月) - マトリョーシカ的日常
サードブロガーの変遷とそれに関連する出来事のまとめ 第二部(2013年10月~12月 増田) - マトリョーシカ的日常
歴史を理解する事は個人を理解する事であり、社会を理解する事である。サードブロガーの歴史も、解釈の問題であり、受け取りかたは千差万別なのかもしれない。
- 作者: E.H.カー,E.H. Carr,清水幾太郎
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 1962/03/20
- メディア: 新書
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