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マトリョーシカ的日常

ワクワクばらまく明日のブログ。

【再読】書くこととは、空白をつくることである。/「化学の歴史」【感想】

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 書くこととは、空白をつくることである。我々の頭に絶えず持ち込まれる、途方もない量の情報を整理し、体系だて、理解するために、ペンを走らせるのだ。しかし、執筆作業の大半は無駄に終わる。たんなる自己満足に陥ったり、意味ある言葉を無理にねじまげてしまったり、愛ある想いをくずかごへ棄てることが多い。それでも空白をつくることを止めてはならない。なぜなら我々は生きているのであって、死んでいないからだ。

 世界は空白ばかりである。化学を例に挙げてみよう。原子の中はスカスカの空洞で、中心の原子核をピンポン球の大きさに拡大すると、電子はそこから約5キロ離れた位置をめぐることになる。麹町中学校のグラウンドで、ピンポン球をかかげると、電子の軌道は山手線のやや内側に位置する。そのくらいの規模でスカスカなのだ。

 メンデレーエフの偉大な功績は、空白をつくったことだ。彼は現代の「周期表」のパイオニアである。周期表とは、元素をある規則に従って並べた表である。当時、元素を体系立てようという運動が強くおこっていた。メンデレーエフ以前にも周期表は存在した。しかし、それらの表はぴっちりと埋められており、隙間もなにもなかった。

 これではまただ不充分であるというかのように、彼はまた周期表にすきまを残す必要があることを見いだした。メンデレーエフはこのすきまを彼の周期表の不完全な点とは考えず、大胆にもこれをまだ発見されていない元素を表すものと把握した。

 まだ認識されていない元素のために、空席を用意しておく。彼の粋なはからいは世界に受け入れられた。その後に空席を埋めるような元素が次々に発見された。彼がつくった周期表は今日のそれのベースとなっている。

 筆の終わりに、筆者は次のことを述べている。

 われわれは知識を得てきた。科学がそれをわれわれに与えてくれた。
 いまやわれわれは叡智をも必要とする。

 叡智がどのようなものかは僕もよく判らない。しかし、書くことによってそれに近づけると確信している。
 
今週のお題「書くこと」

化学の歴史 (ちくま学芸文庫)

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