マトリョーシカ的日常

ワクワクばらまく明日のブログ。

1mmの差に気づく機械人間

 先日、差しを買った。今までは会社にあるものを拝借していたが、やはり自分用の差しが欲しくなったからだ。近くのホームセンターで300円足らずで買うことができた。文具屋に売られているような軟派なものではなく、ステンレス製のがちっとしたやつだ。全長は175mm、幅は15mm、厚さは5mm。150mmまで測ることができる。先端のJISマークがいい味を出している。

 働きはじめてから、寸法の感覚が精密になった。物の大きさなんて前までは考えることもなかった。手に収まればそれで事足りたし、身体が通れば問題はなかった。しかし、今では様々な公差と向き合う日々が続いている。この数字はここからここまででないと、ダメ!ダメ!ダメ!と自分に言い聞かせる。「それじゃあ、どうすればいいのか」という疑問を解消してくれるのが、マイクロメータであり、ノギスであり、差しだ。

 彼らは——僕らの管理が正しければ——正直だ。あらゆる物に数字をつけてくれる。僕は差しを手に入れてから自分の両手の寸法を測った。中指から手首まで240mm、親指から人差し指は200mm、親指の爪の長さ23mm……。

 こうした努力がなんの役に立つのか、と聞かれるとさあわかりません。と答えるしかない。だけれども僕は、今生きている世界が全て表現されうることを確認したい。どんなものも数字で置き換わることを知りたい。多くの人との距離感を寸分の狂いもなく測定し、合成モーメントがゼロになる地点をさぐりたい。そこでずずずとコーヒーを飲んでいたい。

 あらゆる事柄から等距離にありたい。社会人になるときに考えたことだ。仕事と家庭と趣味。家族や友人、仕事の上司。誰にもつかず離れず、へそから拳ひとつ下の丹田に、呼吸を置いていたい。

 1mmの差に気づく人間になりたいことだ。


 書評は明日書きます。

SK シルバースケール 快段目盛 15cm SV-15KD

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