マトリョーシカ的日常

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【再読】過去に学ぶ必要性/「若い読者のための世界史(上)」

横を縦に理解すること。

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若い読者のための世界史(上) - 原始から現代まで (中公文庫)


 家に残っていた最後の段ボールを開けると売ってしまったとばかり思っていた「もういちど読む山川世界史」を発見した。二年ほど前に世界史の勉強しようと購入した本だったが、用語や年号が多すぎて読み切るのを諦めた記憶がある。大学受験に使わなかったため、世界史の知識がほとんどないためだ。

 横に広がっていくのが教科書の書き方だとすれば、今日紹介する「若い読者の〜」は縦一本である。筆者が妻へ話した内容をもとに構成されているからだ。これ一冊で世界史の全てが分かるという代物ではないが、人類が誕生してから今に至るまでの道筋を自分の中に一本持っておくのは悪くない。


ギリシャ

 上巻では四大文明の起こりからハプスブルク家あたりまでの出来事を書いているが、僕としてはギリシャとローマについての記述が一番面白く感じる。それは「ローマ人の物語」を先に読んでいるからだと思うが。

 ギリシャの二大都市であるスパルタとアテネはそれぞれ性格が違う。筋肉ムキムキマッチョマンが住むスパルタはあらゆる俗的なものを排除し常に強さを求める土地だ。弱い子供は幼少のころに捨て強い子供を徹底的に育てあげる。まるでサイヤ人のようだ。一方でアテネは文化や政治を愛した。思索することに喜びを見いだし、知を愛すること、すなわち哲学が生まれた。また市民はある掟によって自分たちがなすべきことを投票によって決めることと定められた。民主主義の誕生である。

 異なる性質をもった二つの都市であるがそれらを結びつけるものがあった。共通のスポーツである。彼らは四年に一度祭典を開き各々の腕を競い合った。それが後のオリンピックとなる。

ローマ

 後に世界最強と呼ばれる軍を持つことになるローマだったが、その始まりは地図上ではほんの点でしかなかった。知力も体力も技術力も経済力もなにひとつ持ち合わせていなかったローマ人だが、彼らが持つ地元愛と根気強さはどこに出しても負けなかった。ゆっくりと確実に周囲を「ローマ化」し、インフラの整備を進めていった。途中でハンニバルという怪物がアルプスを越えて襲ってくるがファビウス・マキシムスの「戦わない戦法」によって撃退する。

 そしてカエサルとオクタヴィアヌスが出てくるが筆者はさらっと流してしまう。あぁ残念。この辺りは「ローマ人物語」に詳しく載っている。

歴史を学ぶこと

 近頃は歴史ブームが起こり、書店でも世界史や日本史にかかわる書物が平積みになっている。歴史を学ぶのは教養が深まるし自分のためにもなるが、ここで改めて歴史を学ぶ意味を考えたい。著者は文中でこう述べている。

 たとえだれかがわたしたちや君たちに歴史を禁じても、それは何の益にもならないのだ。何か新しいものを作ろうとする者こそ、古いことを根本から知らなければならないのだ。

 僕やあなたはこの世にただひとつの存在だが、人間という生き物はだいたい似たような行動や思考をする。「私の悩みは他のだれのものでもない私だけのもの」と意固地になったところでその問題はどこかの哲学者が同じように考えおり、あなた以上に深く考察している。強いものは必ず滅び、生まれたものは同様に死ぬ。歴史は繰り返される。繰り返されるからこそ過去を知らなければいけない。歴史を記録した者は何を考えてそれらを記したのか。「僕たちと同じような失敗をしないでほしい」と伝えたかったからではないのか。

 彼らの願いをかなえるためにも歴史を学ぶ必要がある。ちょっとずつでいいから。