あまりにも暇すぎるので単発のアルバイトをすることにした。昨日メールで申し込み、Lという現場で作業をすることになった。今朝は早くから電車に乗って勤務地へ向かった。スーツ姿の男たちが暗そうな表情をしていた。大変だなあという思いとふぅという気持ちがあった。僕は安心したのか。恐らくきっとそうだ。社会に組み込まれた感覚があった。
どこか小さな工場でそれはそれは不思議な薬を作った。エヌ主任は新人の僕に作業内容を簡潔に話すと、すぐに自分の研究室へこもってしまった。長さ十メートルほどのベルトコンベアがうごきはじめた。僕の作業は流れてくる薬品を専用のケースへ詰める。詳しく書くとフラスコ型の薬品の首根っこをもち、一振りしたあと茶器に青色の箱に入れる。これを延々と八時間繰り返す。
単純作業は好きな方だ。年末におせちをつくった時も楽しかったが、今日のバイトもなかなか良かった。時給は低いし交通費も自分持ちだが、ストレスが全くないのが気に入った。また来よう。
- 作者: 星新一
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1971/05/27
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