マトリョーシカ的日常

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【書評】人望が厚い無関心青年の悲劇/「異邦人」

ほのぼのストーリーで終わって欲しかった

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 異邦人 (新潮文庫)

 アルベール・カミュの異邦人を読んだ。主人公ムルソーが母の死に直面する場面から始まり、それを乗り越えて、周りの人と関わりながら生きていく男の生活を描いた小説だ。そう第一部までは思っていた。なぜ第二部を付け足してしまったのか。いや、それ以降の展開や彼の言動には引き込まれるものがあったし、最後のページを読み切った読後感は素晴らしいものだ。でも僕は「もうちょっとハッピーエンドでよかったんじゃないの」とため息をついてしまった。

ムルソーの性格

 ムルソーについてひと言で言えば人望の厚い無気力な青年である。彼は自分からは働きかけないが、しばしば周りの人から相談をうける。飼い犬を罵りながらも愛しているおじいちゃんだったり、血の気の盛んな兄ちゃんだったり。人が良いのだろうなぁ。

 彼は物事にあまり意味を見いだそうとしない。どうでもいい、どっちでもいいが口癖だ。冒頭の母の死に対面するシーンでもその描写が淡々と綴られていて、彼の心情面では何一つ変化が内容に感じられる。なにより、書き出しが印象的だった。

 きょう、ママンが死んだ。もしかすると、昨日かもしれないが、私にはわからない。養老院から電報をもらった。「ハハウエノシヲイタム、マイソウアス」これでは何もわからない。恐らく昨日だったのだろう。 

 普通は身内が亡くなると、驚いたり悲しんだりするはずなのに、「昨日かもしれないが、私にはわからない」と続くのだ。

 しかしムルソーは全くのロボットという訳ではない。

 私は立ち上がった。レエモンは強く強く私の手を握り、男同士の間なら、いつだって分かり合えるものだ、といった。彼の部屋から出て、ドアを閉めると、私は、一瞬、踊り場のやみのなかにじっとしていた。家じゅうがひっそり静まり、階段の底から、暗い湿った風が登って来た。耳元に、血がどきんどきんと脈打つのが、聞こえた。私はなお動かずにいた。サラマノ老人の部屋で、犬が低いうなり声を立てた。

 先ほど書いたお兄ちゃん、レエモンから励まされレエモンは部屋を後にする。あたりは夜でムルソーはしばらく闇のなかに身を置く。どきんどきんとする。きっと母の死がゆるい形でようやっと彼のもとへ届いたのだろう。おじいちゃんが「こいつはくたばりもしないんだ」とぼやく犬の声が聞こえるのが、死と生の境をより際立てている。

その他色々

  • この小説は先ほど記したように二部構成になっている。第一部で平和に過ごしていたムルソーはひょんなことから事件に巻き込まれ、第二部からは檻の中で過ごすことになる。あまりの環境の変化にまいってしまいそうだが、本人はそうでもないらしい。悲しいとか寂しいとか悔しいなどの感情はなく、いかに時間を潰すかが書かれている。

 

  • 第一部でムルソーらがアルジェの浜へ出かけるのだが、そのあたりの描写がきれいで画像検索することにした。

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 いいところだと思った。

おわりに

 

  • ラストシーンまではネタバレになるので書かない。
  • 文量が尻すぼみになるのは良くないなぁ。

 短いが、考えさせられることがたくさん出てくる小説だった。やはり時の試練に耐えた本は強い。

 なるべく週三回は書評記事を書きたい。月・水・金で。書きやすい本と書きにくい本を組み合わせていけば出来る気がする。まぁちょっとずつ頑張る。