一時間で読めるシェイクスピア
「ブルータス、お前もか」で有名なお話。「ジュリアス・シーザー」はシェイクスピアによって書かれた政治劇、悲劇であり、ローマの有名人ジュリアス・シーザー(カエサル)の暗殺と、それによって引き起こされた戦を描いている。思っていたよりずっと読みやすく、文量も少ない。
時系列を追って
本書は大きく分けて五つ場面で話が展開される。カエサルの凱旋、元老院会議でのカエサル暗殺、その後のブルータスとアントニウスによる演説、第二回三頭政治、そしてフィリッピの会戦だ。
「賽は投げられた」ルビコン川を渡って、ポンペイウス派の軍に勝利し、ポンペイウスの二人の息子を倒したカエサルはローマに凱旋する。
カエサルに王位を贈られることを恐れたキャシアス一行は、彼の暗殺を企てる。そして元老院会議で一斉に襲いかかりめった刺しに。そのあとブルータスは暗殺を肯定する演説をするが、アントニーはカエサルの遺言を公開し、暗殺を許されないことだと否定する。
そしてオクテヴィアス、アントニー、レピダスによる第二次三頭政治が行われた。カエサル暗殺に関わったものを処罰する「処罰者リスト」を作成するとともに、主犯のブルータス、キャシアスを倒すことを決意する。
そうしてフィリッピの会戦が行われ、ブルータスとキャシアスは亡くなる。
これが作中の流れだが、実際は場面と場面の間で、かなりの時間の経過が見られる。暗殺された日は紀元前四十四年の三月十五日だが、第二次三頭政治が開かれたのは翌年の十一月。さらにフィリッピの会戦が行われたのは紀元前四十二年の夏〜秋頃である。(塩野七生、「ローマ人の物語13」年表 、新潮文庫)
前知識がないとよく分からないまま読み終わってしまうので注意が必要だ。
群衆のうごき
あとがきでも言及されているが、「ジュリアス・シーザー」の根本を支えているのは群衆の動きだ。
そして、こうした運命の変転を、その根本において支配している要因が、じつはこの、無定見きわまりない群衆の恣意にほかならないこともまた、この冒頭の場の最後で、フレヴィアスの言葉に端的に語られている通りなのだ。
カエサルの暗殺後、最初は動揺し騒ぎ立てる群衆も、ブルータスの演説を聞くと、「死ぬなよ、ブルータス」「ブルータスを第二のカエサルに」とか勝手なことをしゃべる。しかしその後にアントニーがカエサルの遺言を発表し、全国民に七十五ドラクマ(日本円だと会社員のボーナス並らしい※)ずつ贈られることが判明すると「謀反人どもの家を焼き払うのだ」と暴徒化する。まさに選挙のたびに支持政党を変える人々のようだ。
ブルータスの災難
この事件で一番の被害者はカエサルではなく、ブルータスだったのではないか。実は主犯はブルータスではなく、キャシアスだった。しかし彼は自分がカリスマ性を持たないことを自覚していたため、当時皆からの人望の厚かったブルータスを「国のためだ」と説得し仲間にした。
犯行後、ブルータスの妻は真っ赤に燃えた炭を飲み自殺してしまった。
「ブルータス、お前もか」と言われるほど信頼されていたブルータス。彼が不憫でならない。
おわりに
本自体はずいぶん前に購入していて、長い間積まれたままだった。しかし読んでみるとあっさり終わってしまい、これなら躊躇することはなかったなと思っている。シェイクスピアの作品は他にもたくさんあるようなので少しずつ読んでいこう。
あとローマ人の物語も。
新潮社
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