マトリョーシカ的日常

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【書評】十八の時に読んでいたら僕はバックパッカーになっていた/「深夜特急〈1〉香港・マカオ」

バックパッカーのバイブル的存在。

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深夜特急〈1〉香港・マカオ (新潮文庫)



 インドのデリーからロンドンまで乗り合いのバスで行く。それ以外の目的はなく自由気ままに異国をふらつく、一人の男の旅行記。東京からデリーへ行くチケットを予約する際に、途中下車が出来ると聞き香港に寄ることにした筆者。二三日のつもりが安価なラブホ、香港の刺激的な空気、カイジばりの狂気なサイコロ博打によって滞在期間は一週間、二週間と延びていく。

 旅行者のバイブル的作品。

一番安い宿はラブホだった


 とりあえず香港に着いたはいいが、宿を決めていない筆者。ひょんなことからベンツ男に「一番安い宿」を紹介してもらえることになった。黄金宮殿と名付けられたそれは男性が女性を連れ込むいわばラブホだった。ロクに現地の言葉も知らない状況で普通じゃない宿に泊まる。僕には考えられないことだが、筆者はメンタルが強いのかバカなのか、あっさり宿泊を決める。夕飯の小籠包がおいしそうだった。

 部屋に戻り、机の上に頬杖をついて、ぼんやり窓の向こうを眺めていると、日本を出たのがつい半日前だとは信じられなくなる。
(中略)
 たった半日で、一気に香港の深いところにはまり込んでしまったような、不思議な興奮を覚えた。


どこまでも続く露店街


 香港という町は何でも売っている露店街が存在する。最も、この文章は約二十五年前のものなので今はずいぶん様変わりしているのだろうが。

 だが、面白いのはやはり露店だ。坂道を一本移るごとに、さまざまな露店を見つけることができる。古着屋、雑貨屋、印刷屋、古本屋などはどこにでもあるだろうが、屋台のテレビ売りや、路上の床屋などもいる。


 僕はアジア旅行と聞くと、こういった露店街をまず連想する。あらゆるものがごっちゃになって売られている様は日本では見ることはできない。外国人が日本の100均ショップを見たときの驚きと似ているかもしれない。

 <香港って街は、なんて刺激的なんだ>


手に汗握るサイコロ博打


 この巻で一番面白かったのはなんといってもサイコロ博打のシーンだ。筆者は香港の喧噪から離れるため、マカオに足を伸ばす。その気は全くなかったのだが、ついカジノに入ってしまい、博打に溺れることに。

 彼がはまったのは「大小」という三つのサイコロを使ったゲーム。よくあるカジノの「ルーレット」に似ており、サイコロの出目のひとつや、総和などを当てる。ゾロ目が出た場合はそこに賭けていた人以外の掛け金はカジノ側の総取りになる。

 ディーラーが出目をある程度操作できることを知り、筆者がそのタイミングを予想するシーンはまるでカイジのようだ。

二十六、七才が海外へ出る適齢期


 巻末の対談で、いつ海外へ出発すべきかという話が出ていた。筆者の沢木さんは二十六、七くらいがちょうどいいと言う。

その年齢だと、若干の世間知とか判断力がついていて、いろいろなことに対するリアクションもできる。


 十八才くらいで海外へ行くと、なにもかも初めてづくしで、大変だからとのこと。

 大学一年のころにこの本と出会っていれば、僕はバックパッカーになっていたかもしれないけれど、別にこれから海外へ行っても遅くはないのだ。ちょっと勇気をもらった。