マトリョーシカ的日常

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【書評】主人公が登場しない物語/「桐島、部活やめるってよ」

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桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)

 一人の高校生、桐島がバレー部を辞めた。ひとつの出来事が周りの生徒に与えた影響を淡々とリアルに描く。桐島の視点で書かれた部分は一切ない。そう、桐島は出てこないのだ。主人公が登場しない物語。新鮮で驚いた。



 物語は七章に分けられており、それぞれ六人の人間の視点で桐島に対する心境を描いている。数が会わないのは一人がふたつの章で主人公として登場するからだ。六人の人物はそれぞれ、チャラい野球部の菊池、桐島にポジションをとられていたバレー部小泉、恋するブラバン部沢島、ネクラ映画部前田、ボーイッシュなソフト部宮部、バドミントン部東原。


 面白いのはリア充の菊池がネクラの前田をうらやむシーンだろうか。特になにも打ち込むものがなく、ただなんとなく日々を生きてきた菊池にとって、映画の撮影に励む前田は輝いて見えた。

 桐島、たぶん、お前も、バレーをしているとき、こんな顔をしていたんだろう、と俺は思った。自分がやりたいことを全力でやっているときは、たぶん誰でも、こんな顔をしているのだろう。とっぷりと何かに濡れていた心が絞られて、蜜のようにこぼれ出た感情が血管を駆け抜けていく。

 

消えたものの声をきけ

 高校時代、数学の先生がよく言っていた。「消えたものの声をきけ」変数変換で消去されたxやyの条件をもう一度みてみようということなのだが、いちいち表現がおおげさで面白かった。「桐島、部活やめるってよ」は桐島を書かないことで、完成するのだと思う。彼の声を直接表に出さず、周りの人の心情によって読者に想像させる。そうすることで彼に対する自由度や深さが増すのだ。


おわりに

 AKBの課題図書だったらしく、横山由比が写っているカバーが巻かれていた。オリジナルのブックカバーがもらえると聞いたが、恥ずかしいので書店のものをお願いした。

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