肉体労働のバイトをした。ひととおり資材を上げるとビルの屋上で休憩をとった。10畳程度のスペースに吸い殻入れがひとつ置いてあった。バイト仲間たちはタバコを吹かしながらだれかしらのうわさ話をしていた。頭上から太陽がギラギラと照りつける中、僕はアクエリアスを飲みながら街を見下ろした。
考えると不思議だ。世界は人間がつくったものであふれている。いま自分が眼にしているもののほとんどは誰かの手がかかっている。ビル、看板、窓、パイプ、ボルト、ネジ、ワッシャー。眼に見えないものもそうだ。インターネット、電話回線、ラジオ。神様なんていなくって人間が神様なんじゃないかと疑うほど。
この本にでてくる珠川食品という会社は「お客様の声は、神様からのひと言」というモットーを掲げている。主人公の涼平は社内でヘマをやらかし、リストラ候補を集めたお客様サービスセンターへ異動されてしまう。いやいや働くうちに神様からのひと言から社内の腫瘍がわかり、ついに膿をだそうと行動へ移す。
「手の中に握ってるものが、たいしたものじゃないことを知っているのに、手のひらを開くのが怖いんだ。全部こぼれ出ちまうのが。本当にたいしたもんじゃなかったってことを知っちゃうのをさ。誰も彼も、俺も」p290
そう、神様だって自分がなにができるのか分からない。おびえてるんだ。
書評ってさ、書くの難しいよね。
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